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抗菌剤の適正使用

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 先の土曜日、クリニックを休診にして、新潟で開催された北海道・東北連合小児科医会に参加してきました。その会での特別講演は新潟のS先生でした。テーマは抗菌剤の適正使用。風邪に抗菌剤はむしろ有害で腸内細菌叢に影響を及ぼし、将来のアレルギー、大腸癌、過敏性腸症候群、肥満など様々な病態のリスクが高くなる。不要の抗菌剤の使用は耐性菌を増やすと。その話しは別の学会でも聞いていましたから、「最近、多くの小児科医は抗菌剤の適正使用を心掛けるようになった。しかし子ども達は風邪症状でまず他科を受診することも多い。そこで多くの不要の抗菌剤が処方されている現実がある。それに対してどのような対策を取られていますか?」と質問してみました。するとS先生は「そのことはどの先生も感じていることでしょう。自分は機会があるごとに他科の先生達に向けても講演している」と返答されました。
 そういえば最近市内のA耳鼻科の処方が変わってきた気がするのはそのお陰でしょうか。小児科だけでなく、各科の医者が抗菌剤の適正使用を心掛け、耐性菌を増やさないようにしないと、近い将来、細菌感染症はまた人類の脅威になる可能性があります。癌で亡くなるよりも細菌感染症で亡くなる人の方が増える時代が来るのではないかと危惧されているそうです。

 写真は新潟で見かけた黒い新幹線!
調べたらこの新幹線は外見だけでなく、車内も多くのアートを楽しむことが出来て、子どもがプラレールで遊べる車両もあるようですよ。ただ走っているのは新潟と越後湯沢の往復だけだそうで、ちょっと残念でした。

登場人物になる

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 先の連休に広島で開催された小児心身医学会に参加してきました。実は学会そのものには期待しておらず、昨年の豪雨で被災した広島の友人に会うのが目的でした。しかし期待していなかった学会は大変有意義なものでした。以前よりも親子の関係性への注目が深くなり、また多くの新しい情報もありました。
 今日のタイトルはその学会での広島の児童精神科医M先生の特別講演でのフレーズです。「子どもと関わると言うことは、その子の人生の登場人物になるということである」。それは力動精神医学の講演でした。ご自分の人生に精神医学の歩みを重ねての話しでしたが、静かな語り口の裏に激しい情動、厚い情熱を感じさせる素晴らしい感動的な講演でした。

 我々は日々子ども達と接しています。例え関わりが一瞬であったとしても、我々は彼らの人生の登場人物なのです。脇役かも知れませんが、往々にして脇役が大きな物語の重要な登場人物だったりします。子どもと関わる我々はそれを心得て関わる必要があるのですよね。

 実りの秋、台風が近づいています。大きな影響のないことを願っています。

雲の十和田湖

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もう随分前の話ですが、御鼻部山の展望台から十和田湖に蓋をしたように雲が掛かっているのを見たことがあります。その時はカメラを持っていませんでした。その景色をもう一度みたい、カメラに納めたいと思っていましたが、なかなかその機会はありませんでした。先日、朝バイクで十和田湖まで走ると、雲海が湖面を覆っていました。前回ほどではありませんでしたが、それでも久しぶりの景色でした。しかし今回もカメラを持っておらず、携帯で撮りました。もう少し早い時間だったら、もう少し見応えのある景色だったかも知れませんね。次の機会を楽しみに待っています。

 それにしても震災後、十和田湖は随分と寂れてしまいました。こんなに素敵な景色なのに勿体ないものです。青森県は観光資源で溢れているのに、それを活かし切れていないように思えて残念です。もっとも僕自身は静かな方が好きで、沢山の人でごった返すのは好きではないのですが、閉館したままの施設が放置されるのは、なんとも淋しいものですよね。

 写真の中央より少し右、遠くにかすむ山は岩手山です。

マタニティ・ベビーフェスのご紹介

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 9月23日秋分の日、弘前に乳幼児精神保健学会FOUR WINDS会長の渡辺久子先生をお迎えし、ヒロロの文化交流館ホールにて講演会が開催されます。午前の部は一般向けで講演タイトルは「赤ちゃんバンザイ」、午後は子どもと関わる分野の専門職対象の講演でタイトルは「乳幼児精神保健の基礎と臨床」です。

 弘前市はヒロロに「子育て支援包括支援センター」を作りました。母子手帳の発行から様々子育て支援に関わる様々な事業を全て一カ所に集めたのです。その包括支援センターが秋分の日にマタニティ・ベビーフェスを企画したのです。そしてそのフェスで講演会を企画し、渡辺先生を招聘したいと僕に依頼がありました。丁度、我々FOUR WINDS青森でも渡辺先生を呼んで勉強会を開催するつもりでしたから、それは渡りに船と弘前市に協力することにしました。そして渡辺先生の方からの提案で「折角弘前に行くのだからスタッフ向けの講演もやりましょう」との申し出を有り難くお受けし、1日に二つ、講演して貰うことになりました。渡辺先生に講演のタイトルを伺ったところ、「それは先生が決めてください。タイトルに合わせたお話をします」と言われてしまいました。それならばと自分の思いも込めたタイトルを考えました。

 そんな訳で9月23日、僕が尊敬する渡辺久子先生の講演会があります。是非、多くの方にお越しくださいますようお願いいたします。

八甲田レポート:夏山

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 お盆休み、予定していた旅行を家族の健康上の理由でキャンセルし、代わりに八甲田を登っていました。天気予報では猛暑が予想されており、早出して涼しいうちに酸ヶ湯を出発しました。
 朝の清々しい空気を満喫しながら森を歩き、毛無岱の湿原に出ると、夏のキンコウカが盛りを迎えていました。しかし稜線ではもう秋風が吹き始め、イワギキョウやアキノキリンソウなど秋の草花が咲いていました。

 自分は7時前に登り始め、気温がピークの昼頃にはもう下山していたのですが、それでも水分摂取が不十分だったようで、熱中症気味となり少しめまいを感じていました。しかし昼近くになって登ってくる登山客も多く、この暑い中を登るのは大変というか大丈夫かしらと案じていました。山で体調を崩すと大変です。以前、山で歩けなくなったまだ小さな女の子を助けたことがありました。お父さんにその子を背負わせ、ロープウェイの休憩室に運び、経口補水療法でなんとか回復しました。山では無理は禁物です。特に子どもと山を登るときは子どもの体力に合わせた計画を立ててくださいね。

ナラティブとエビデンス

 先週、大学の小児科学教室に出向き、医局の先生方に「子どもの心の発達の理解と臨床」というタイトルで1時間のお話をしてきました。この10年ほどで自分が学んできたことの一部を話しました。実は1ヶ月ほど前に小児科の教授の元を訪れ、大学の若い小児科医達に子どもの心の講義をさせてくれと自分から頼んだのでした。子どもの心の発達の理解は身体を診るときにもベースとなると考えています。自分は若い頃、それを勉強して来ませんでしたし、勉強する機会もなかったのです。心の状態は身体の病気にも影響します。小児科医のベースとしてその理解が必要と考えています。

 心理学者のエリクソンという方は人の人生を8つの発達段階に分け、それぞれの段階に心理社会的危機があり、達成すべき課題がある。それを乗り越えることで力(virtue)を獲得すると述べています。今の自分の年齢は下から2番目の壮年期に当たります。その課題は「次世代を育成すること」、心理社会的危機は「停滞」。正に自分が考えていることとだと思いました。今、僕が考えていることは如何に後を育てるか、種を蒔くかということです。

 さて、自分の拙い講義は大学の若い小児科医達に伝わったでしょうか。心の話しはナラティブつまり物語の世界です。一方、大学の先生方はエビデンス実証の世界に生きています。様々なデータを読み解き重い病気を治療して行きます。かつて自分がそうだったように、きっと若い先生方は目の前にある膨大な文献の山に四苦八苦していることでしょう。心の物語に耳を傾ける余裕はないかも知れません。異質と感じたかも知れません。しかし少しでも心の片隅にそれが残ってくれることを願っています。

幼児肥満ガイド

 小児科学会誌の7月号で今日のタイトルの要旨が載っていました。成人の肥満が様々な健康被害をもたらすことが知られ、メタボなどという言葉が流行し、今でも健診で身長体重だけでなく腹囲もチェックされているのは皆さまもよくご存じとの通りです。最近は学童でも肥満や痩せを健診で割り出し、通知を出すようになりました。しかしその学童の肥満の始まりは幼児期にあり、幼児期からの肥満予防対策が望まれています。

 幼児の肥満に影響する因子は遺伝的な要因と環境要因がありますが、妊婦さんの肥満だけでなく逆に痩せも子どもが肥満になりやすい遺伝子のスイッチを入れてしまうようです。生まれてからの環境因子は
1)親の肥満
2)睡眠時間が10時間以下であること
3)座ってテレビを見るなど身体を動かさない時間が2時間以上あること
4)果糖を含むジュースや清涼飲料水をよく飲むこと
とありました。

そして乳児期は生活習慣を身につける時期であるため、幼児期からの肥満予防対策や肥満をそれ以上に増悪させないための指導は極めて重要であるとありました。

 肥満も予防接種と同じで、肥満になってからの指導よりも肥満にならないための指導が大切と言うことでしょう。弘前では1歳半の内科健診が個別健診になりました。1歳半健診は子どもの発達を見るのにとても大切な健診ですが、発育のバランスも注目して見て行きたいと考えています。
明日から直ぐにでも (^_-)-☆

レスパイト

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 先の連休、盛岡で開催された全国病児保育研究大会に参加してきました。レスパイトとはその研究大会のO会長の話に出てきた単語です。小休止という意味ですが、主に介護の分野で使われる言葉です。患者さんを一時的に入院させ、介護に疲れた家族に休息を取って貰うことで、むしろそれがより良い介護に繋がります。O先生はそのレスパイトを病児保育に当てはめ、子どもの看病に疲れたお母さんを病児保育で預かって、レスパイトさせるというのです。病児保育は素晴らしい子育て支援制度で、我々はこの事業を更に推し進めるべきと言っていました。しかし僕はちょっと違和感を感じていました。僕は病児保育の前に必要な施策があるのではないかと考えています。

 全国病児保育協議会にはことりの森開設時に大変お世話になりました。その恩もあって、協議会の活動には随分と協力してきました。しかし最近、僕の考える病児保育は協議会のそれと少しずれてきているのを感じています。O先生は講演で子どもが病気の時は病児保育室に預けてレスパイトし、子どもが元気になったら親子で一緒に遊びましょう、それがベストと言っていました。もちろん一緒に遊ぶのは良いのですが、可能であれば養育者が看病して、そして子どもが回復したら一緒にそれを喜ぶことで愛着は強くなると思うのです。しかし様々な事情でどうしても看病できないこともあり、それをサポートするのが病児保育事業だと思うのです。自由に看護休暇を取れない今の世の中の方がおかしいのではないでしょうか。国は病児保育事業を推し進めようとしています。しかしその前に僕はお父さんお母さんが安心して子どもを看病できる世の中になることを願っています。

 写真は研究大会の昼休みの企画で、弦楽四重奏のミニコンサートです。パイプオルガンのある素敵なホールでの、新日本フィルハーモニーの方の演奏は、心に染み入る素晴らしいものでした。

孫の試練

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 前回の夜泣きの記事ですが、少し訂正します。
お母さんが自然に、大らかに、子育てできるゆとりが必要と書きましたが、大切なのはそれが可能になるような周囲(家族やご近所)の思いやりですよね。
前の書き方だとお母さん一人に責任を押しつけているようで不適切でした。訂正します。

 さて、先週の土曜日、娘が1歳になる息子(つまり僕の孫)を連れて結婚式を挙げました。挙式はディズニーランド近くのホテルの協会で。式の間中、孫息子は泣き続けていました。いつもなら泣いたら直ぐに抱っこしてもらえるのに、ママのおっぱいを吸えるのに。抱っこしてもらえてもほんの短い時間だけ。貸衣装をよだれで汚す訳には行きません。娘の胸元に手を入れようとしますが、直ぐに制されます。ママが目の前にいるのに抱っこしてもらえないフラストレーションで彼は泣き続けました。新婦入場で僕が娘の手を取ってエスコートし、旦那さんにその手を渡すのですが、普通なら目頭が熱くなるところでしょうが、孫息子の泣き声に気を取られ、それどころではありませんでした。
彼には大きな試練でしたが、まあ娘がそれで幸せを感じるなら育児にも良い影響があるだろうということで𠮷としましょう。
式が終わって娘の部屋を覗きに行くと、そこにはニコニコと笑顔の孫息子がいました。

 多分、これはマルトリートメントなのでしょうが、それを上書きする幸せな思い出が積み重なれば良いのです。どんな子も幸せな楽しい思い出だけではありません。すべての子どもが多かれ少なかれ心に寂しさを気持ち、傷を受けています。しかしその傷も心の発達にとって必要なものです。そうでなければ他の人の心の痛みが分かる人にはなれないのですから。

残念な記事

 赤ちゃんの夜泣きで苦労されている方も少なくないのではないでしょうか。かく言う我が家も長女の夜泣きがひどく、確か生後2歳ころまで毎晩3、4回は泣きました。先日、読売新聞に夜泣きについての記事が載っていました。良い記事なら院内に張り出そうと思ったのですが、読んでみてちょっと残念に思いました。

夜泣きが子どもの発達に影響することもある、虐待に繋がる、睡眠障害の可能性もある・・・などと不安を煽り、
更には夜泣きの対策として、
生後6ヶ月以降は子どもが泣いてもしばらく見守る
生後9ヶ月以降であれば夜は断乳する。

まるで赤ちゃんの気持ちを無視しています。赤ちゃんに心がないと思っているのでしょうか。赤ちゃんの夜泣きの理由を考えず、泣いても抱っこせず放っておけとはあんまりだと残念に思いました。

 さて、漢方治療では夜泣きに使う幾つかの処方があります。代表的なお薬が甘麦大棗湯と抑肝散。これらは成人の不眠や不安症にも使われます。更に漢方治療では母児同服といって同じお薬を親子に飲ませる治療法があります。つまり夜泣きはただ子どもの問題ではなく、母親の不安、苛立ちを赤ちゃんが感じ、それで夜泣きをすることがあるので、母児同服は理に叶っているといえいます。漢方治療は経験の積み重ねで作られたお薬ですから、昔の人も夜泣きの原因を経験的に分かっていたのでしょうね。

 確かに生まれ持っての気質(性格)で神経質な赤ちゃんはいると思いますが、“子どもは親の心を映し出す鏡である”とよくいわれます。先ずは、お母さんがゆったりと構えていることです。自然に、大らかに、子育てできるゆとりが必要なのでしょうね。

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