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ボツリヌス菌と腸内細菌

 先日、ボツリヌス症で亡くなった赤ちゃんのニュースがありました。乳児に蜂蜜を食べさせてはいけないということを知らなかった若いお母さんだったようです。このニュースで赤ちゃんに蜂蜜をあげてはいけない理由がボツリヌス菌だと再確認した方もいらっしゃるのではないでしょうか。では何故、赤ちゃんにはダメで大人だと良いのか。それは蜂蜜の中に高率に存在するボツリヌス菌の芽胞が赤ちゃんの腸内で発芽し、神経毒を産生する。それが麻痺を起こし、呼吸できなくなり亡くなってしまうのです。なぜ赤ちゃんの腸内だと発芽して大人だと発芽しないのかというと、大人では腸の中の細菌叢が発芽を阻止するのだそうです。つまり多様な細菌の存在が発芽を邪魔するのですが、乳児ではその細菌叢が確立していないためボツリヌス菌の芽胞が発芽してしまうのです。

 その腸内細菌の役割について最近いろいろと話題になっています。病原菌の繁殖を抑えるだけでなく、幾つかのビタミンを生成したり、免疫に関与したり。母乳栄養児では腸内細菌は善玉菌の代表であるビフィズス菌が主流となりますが、人口栄養児の腸内細菌は複雑で悪玉菌も存在します。母乳栄養児の方が感染性胃腸炎や風邪に罹る率も少ないことが知られています。逆に乳児への抗生剤の投与はその腸内細菌叢に悪影響を与えます。腸内細菌とアレルギー疾患との関連も示唆されています。

 ボツリヌス症を起こすのは乳児期だけでなく、抗生剤を大量に投与されたときもその危険性が高まるそうです。腸内細菌叢、今流行りの言葉で言えば腸内フローラ。健康を保つには腸の健康も重要。そのためにも赤ちゃんに不要の抗生剤は避けたいものです。

ニセ医学

 毎月、保険医団体から送られてくる雑誌の先月号の特集は “「ニセ医学」に出会ったら”でした。世の中には「ニセ医学」がはびこっています。特集ではその代表として「サプリメント」や「癌放置療法」、週刊誌の記事「飲み続けてはいけない薬」などが取り上げられていました。我々がそれらの「ニセ医学」に対抗するにはエビデンスに基づいた診療、治療の効果や副作用の分かりやすい説明、患者を叱らない、見捨てない・・・等々色々と書いてありました。

 エビデンス(証拠)に基づいた医療(EBM)ですが、僕はこれがくせ者かなと思っています。どの医者も自分では正しいと信じて医療を提供しているのですが、それが実は正しいとは限りません。例えば食物アレルギーの治療。「食べさせない」から「如何に食べさせるか」というように、この10年で180°と言って良いくらいに変わりました。今から思えば10年前の自分の医療はニセ医学と言っていいかもしれません。だからこそ、最新の情報を求めることが必要ですし、常に今自分が提供している医療を検証して行くことが必要です。そして間違いに気付いたら何時でも修正出来る柔軟性が必要なのです。

さて、あなたが今、病院で受けている医療は本当に正しいものですか?

小さな小さな学習発表会

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 11月3日文化の日、校医をしている弘前ろう学校(略して弘ろう)の学習発表会がありました。今、弘ろうの生徒は小学生6人だけ、それに幼稚部の7人を加えても13人。ろう学校と言っても発表会は作品展示に劇やダンス、歌。他の小学校と変わりはありません。ただ小学生だけでは人数が少なすぎるので幼稚部も加えても発表会です、毎年近くの大和沢小学校からも応援が来てくれます。PTAの出し物まであります。生徒よりも先生の数の方が多く、実習生も来ています。父兄だけでなく、毎年卒業生も沢山来てくれ、とても生徒数13人の発表会とは思えない程に盛況な発表会です。何より僕が弘ろうの発表会が好きなのは生徒達が皆兄弟のように仲が良く、それぞれが助け合っている姿に心動かされるからなのです。
 最後の生徒代表の言葉を聞いて、熱いものがこみ上げてくるのを禁じ得ませんでした。きっと彼らは僕の想像以上の努力をしているのでしょうが、明るく生きています。とても可愛い子ども達です。

麻疹とコンサート

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 大変なニュースが入りました。ジャスティン・ビーバーって知ってますか?
僕は昨日初めて知りました。若い人たちの間ではかなりの人気のアーティストだそうですね。そのコンサートが幕張メッセで25000人を集めて、8月13,14日に開催されたそうです。ところが19才の若者が発熱し、発疹が出ているのにもかかわらず、そのコンサートに出て、後から麻疹と判明したというのです。

 彼はそのコンサートの前、バリ島に旅行しており、そこで感染したものと思われます。発症は9日。医療機関を受診しても麻疹は初め熱と咳だけで、風邪と区別は付かないのです。潜伏期間は11日。14日にコンサート会場で他の人に移したとして、その人に免疫がなければ発症するのは25日。今日です。コンサート会場だけでなく、都内に宿泊したそうですから、20日頃からの発熱で、10日前に東京、千葉方面へ出掛けた方は要注意。25000人ともなれば全国からそのコンサートに出掛けているはずです。きっと弘前からも。全国へ麻疹のウイルスがばらまかれれば大変な事になります。折角、日本も麻疹の制圧国に仲間入りしたのに、もし各地に発症者が広がれば、それを収拾するには大変な努力が必要になります。疑いを持って早くに対策を取ることが重要です。思い当たる人は、医療機関を受診したとき早めに申告してくださいね。麻疹は大変な感染症です。治療薬はなく、2,300人に一人は命を落とす感染症です。安易に考えてはいけません。
 
 それにしてもその若者。かなり苦しかったでしょうに、それでもコンサートに行くなんてよほどのファンなのでしょうね。

 写真は宮古島の東平安名崎。隆起したサンゴ礁の石灰岩が不思議な景色をつくっています。細い半島で、その灯台の上からは周囲320度を海に囲まれ、初日の出の名所だそうです。

夜泣きに「笑顔の無言療法」

 外来で赤ちゃんの夜泣きのことを相談されることがあります。僕は「良いお薬があるよ。漢方薬が8割くらいの子には効くよ」とお話しして甘麦大棗湯(かんばくだいそうとう)を処方します。これはクッキーの原料のようなお薬で甘くて飲みやすく、副作用はありません。もう一つ、抑肝散も夜泣きに使うことがあります。しくしく泣くような夜泣きに甘麦大棗湯が有効で金切り声で泣くような夜泣きには抑肝散が有効と言われています。また漢方薬には「母子同服」という考え方があります。これは子どもと同時に母親にも服用させるというものです。甘麦大棗湯は不安を鎮める働き、抑肝散はイライラを鎮める働きがありますが、赤ちゃんの夜泣きの原因は、母親の不安やイライラを赤ちゃんが間主観的に感じる(心と心が響き合う)ことによることが多いからです。
 夫やお姑さんとの意見の食い違い、アパートで赤ちゃんの泣き声がご近所さんにに迷惑になってはいまいかと心配したり、それらのお母さんのストレスを赤ちゃんが感じて夜泣きしてしまうことがあります。内藤寿七郎先生の「育児の原理」には夜泣きはいずれ治るものと家族もご近所の方も大らかに接してあげて欲しい、そうした思いやりが夜泣きを一番早く治すとありました。

 「育児の原理」にはもう一つ夜泣きの治療法が書いてありました。それは「笑顔の無言療法」。神経質な赤ちゃんに言葉をかけすぎると夜泣きが始まることがある。もしこれといって夜泣きの原因が見当たらない場合、言葉のかけすぎを疑って、1週間くらい“だんまり作戦”という無言療法が効果あることがあるのだそうです。これは声を出さないで笑顔だけで赤ちゃんに接し、かまわれすぎて高ぶった神経を鎮める治療なのだとか。
赤ちゃんの夜泣きでお困りの皆さん、一度試してみてはどうですか?
「治ったら普通の態度で接すること」とただし書きもありました。

マイ保育所

 以前、新聞でも報道されましたが、県のモデル事業としてマイ保育所なるものが、10月1日から津軽地域のいくつかの保育園で実施されます。その内容は体調不良児の預かりと代理受診。体調不良児とは微熱や少しの下痢程度の症状の軽い児のこと。ただ、これには医療機関を受診する前の子も含まれるそうです。代理受診とは親に代わってその児を医療機関に受診させること。
 症状の軽い体調不良児のお預かりはまだ良いのですが、受診前の児の症状が本当に軽いかどうかを誰が判断するのでしょう。まして代理受診なんて誰が言い出したのでしょう。その話を初めて聞いたとき返す言葉がありませんでした。自分で病児保育をやっていますが、僕はそれは必要悪だと思っています。本来ならばない方が良い。どうしても休めないときに最後の砦として子どもをお預かりする。ただし子どもの心に最大の配慮をして。しかし代理受診は少し違います。例えば保育園で子どもが体調を崩したとき、母に代わって医療機関を受診する。それはあまりに就労保障に傾いて子どもの心を蔑ろにしていると思うのです。体調が悪く、保育園に連れて帰れないときはそのまま病児保育室へ連れて行く・・・それはたらい回しというものです。

 そんな理由で僕はマイ保育所の協力医になることはお断りしていました。
安保法案も可決されてしまいました。世の中が危機的状況に陥ったとき、一等最初にしわ寄せが来るのは子どもとお年寄り。子どもを大事にしない国は滅びます。何だか日本の将来が不安でなりません。

舌下免疫療法

 以前、このブログでも書いたかも知れませんが、舌下免疫療法という新しいアレルギーの治療法があります。これは皮膚から浸入する異物(主としてタンパク質)に対してはアレルギー反応を起こすが、口から入る物に対してはアレルギーを起こさない、耐性を獲得できる(治る)という体内の反応を利用した治療法です。既にスギの花粉症治療で実用化されています。スギの花粉のエキスを口に含むことでスギ花粉に対する耐性が獲得できます。これは抗ヒスタミン剤などの単なる対症療法ではなく、アレルギー体質そのものを治療するわけで画期的と言えます。

 それと同じ方法でダニに対する舌下免疫療法が開発されたことが、今週の「ためしてガッテン」で紹介されていました。子どもに使えるのはまだ先のことになるでしょうが、期待できます。近年、様々なアレルギーに対する考え方、治療法が変わりつつあります。食物アレルギーについても不要な食物制限は反って重症の食物アレルギーを引き起こす可能性があることが分かってきました。食べられる範囲で積極的に食べた方が食物アレルギーは治るのです。我々は常に知識を更新しなければならないし、新しい知見を社会に情報提供して行くことが大切だと考えています。

 スギやダニの舌下免疫療法はスギやダニ単独のアレルギーがある患者では有効ですが、複数のアレルギーがあるとその効果は限定的です。将来、それぞれの人が持っているアレルギーに合わせた、オーダーメイドできる混合タイプの舌下免疫療法が開発されるといいななんて夢見ていました。

有効な少子化対策とは?

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 昨日の夜、保健センターの会議室で児童・生徒心電図検診一次判定会の資料で、過去の児童・生徒数の報告がありました。それによると平成18年の弘前市の小学1年生の数は1533人、中学1年生は1700人。今年の小学1年生は1193人。中学1年生は1418年。平成18年の中学1年生は平成12年の小学1年生です。平成12年というと平成17年の市町村合併の前、僕が開業した年です。その頃から比べると今の子どもの数は3分の2。どんどん少なくなってきています。国は少子化対策として子ども手当てや保育園の増設、子どもの医療費の無料化など様々な対策を取っています。しかしその政策は不十分で一向に少子化の流れが止まる気配がありません。僕にはそれらの政策は少しピントがずれているように思えるのです。果たして保育園を増設して少子化の流れがとどまるでしょうか。子どもを作らないのは金銭的な理由が一番でしょうか。もちろん貧困は大きな問題の一つかも知れませんが、少子化の根本的な原因は別にあるように思います。
 今朝のニュースで若者への意識調査によると、日本は先進諸国の中で最も若者の自信や幸福感が低かったそうです。自己肯定感や自尊感情の基礎になるのは乳幼児期の愛着形成にあります。自分自身が幸せな楽しい子ども時代を送ったという思いがない若者が、次の世代を担う子ども達を作ろうという意識が低くなるのは当然ではないでしょうか。今の赤ちゃんがあまえで満たされた幸せな子ども時代を過ごして初めて、将来その子ども達が大人になって次の世代を作ろうという気持ちになるのではないかと考えます。少子化対策の根本は今の子育ての質を考えなければならないと思うのです。

 今週の写真は5年前に行ったマッターホルン。この写真は一緒に行った友人のHが撮ったものです。同じアングルで自分のは子どもを入れずに撮った写真でした。そんな訳で今週は友人Hの写真を採用。もちろん・・・無断です (^_-)-☆

ブルーライトアップ

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 4月2日は国連の定めた世界自閉症啓発デーでした。ブルーライトをネットで検索すると、スマホやPCから発するブルーライトの弊害を書いたサイトが沢山出てきます。でも今回のタイトルのブルーアップライトはこの自閉症啓発デーで日本各地、いや世界各地で催されるイベントの一つです。東京のゲートブリッジや青森でもアスパムがブルーにライトアップされたそうです。ブルーは癒しの色。街灯をブルーライトにすることで犯罪が減ったという話しもあります。その日、弘前大学で開かれた記念フォーラムで、大学の精神科のN教授が「弘前でもお城をブルーにライトアップしたかったが今年は叶わなかった」と仰っていました。
 世界自閉症啓発デー・日本実行委員会のHPを見ると、カタール王国の王妃の提案で毎年4月2日を自閉症啓発デーとすることが決議されたとありました。自閉症はじめとする発達障害についての理解を広めることは、発達障害のある人だけでなく、誰もが幸せに暮らすことが出来る社会に繋がるものだと。

 新しい精神障害の分類では所謂従来型の自閉症や、高機能自閉症、アスペルガー障害などを含めて全てが一つの自閉症スペクトラムと分類されました。スペクトラム、つまり光のスペクトラムに赤から紫まで連続性があるように、自閉症と定型発達(つまり普通の人)とは連続性を持って繋がっており、その色の濃い薄いだけなのだということでしょうか。すなわち誰しも少しはその色を持っていると言うことです。僕だって決して人とのコミュニケーションが上手な方とは言えません。自分にもその色があるのを感じます。正に発達障害の子ども達が安心して暮らせる社会は、全ての子ども達が幸せに暮らすことの出来る社会に繋がるということなのでしょう。やっぱり金子みすずの「みんなちがって、みんないい」のですよね。

清潔と不潔の意味

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 所謂、清潔不潔の意味と我々医療関係者のいう清潔不潔の意味とは少し違います。学生時代、あるいは医者になって間もない頃、この清潔不潔の概念を厳しく教え込まれました。ここがしっかりしていないと手術や様々な処置をした際、感染を起こし、医療事故の元になります。我々のいう清潔とは滅菌処置をしたものだけが清潔でそれ以外のものは全て不潔と考えるのです。台所で綺麗に洗ったお皿でもそれは不潔です。そして清潔な物でも少しでもそれ以外の物、つまり不潔な物と接触しただけで、それは不潔と見なします。滅菌した医療器具を不潔な手(一見清潔でも)で触ると、それは全て不潔なのです。手術の前のようにしっかりと時間を掛けて手洗いし、滅菌した手袋で触るのでない限り。それは日常生活には無用の概念、むしろ迷惑なものかも知れませんが、本気で感染予防が必要なとき、その感覚は極めて有用です。

 今週、ノロウイルス胃腸炎の話題が世間を騒がせました。ノロウイルスは感染力が極めて強く、それを予防するのは困難です。しかし感染経路は接触感染なので先の清潔不潔の概念に基づき、完璧な予防対策を取れば感染をコントロールすることは可能です。『ことりの森』ではノロウイルスの他の子への施設内感染はありません。ノロやロタと分かっていればドアノブもハイターで消毒します。子どもを看る保育士は担当制にして他の子には触りません。
 浜松のパン工場でも当然、衛生管理は行われていたのでしょうが、保菌者は下痢をしていなかったそうです。むしろそこが落とし穴だったのかな。感染しても症状の無いことは少なくないし、胃腸炎が治ってもしばらく便にウイルスが出てくるのです。従って、下痢をしていようがいまいが、普段からしっかりと衛生管理をするべきなのです。


 ただ、家庭でこれをやっていては疲れるばかりでしょう。手袋をして食事の用意をするお母さんはいないんじゃないかな。普段から感染しても負けない体を作り、発症しても適切に対応できるホームケアのスキルを身に付けることが大切と思っています。

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