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小児科医のアイデンティティとは

弘前市では4ヶ月と7ヶ月健診を個別健診で、1歳半と3歳半健診を集団でやってきました。今年の春からその集団健診が少し変わります。まず今年から3歳半健診が、来年度から1歳半健診も変わります。小児科医は身体を診察するだけ、発達の評価は大学の精神科が行うことになりました。まず問診票でチェックし、それで引っ掛かったこどもは大学の精神科に行ってそこで検査、評価を行い発達障害か否かを診断するというものです。健診会場には精神科のお医者さんは来ません。
 僕はその新しいシステムに反対してきました。確かに今までの健診では診断されずに見過ごされてきた発達障害の子達がいました。しかし診察もせずチェックリストだけで疑いのある子を大学に呼び出し検査する。ちょっと乱暴ではないかと思ったのです。もちろん早期に診断し、早くから療育することで救われる子もいるでしょう。しかしそれで傷つき悩む親子いるのではないかと危惧するのです。そして何よりそれに対応する社会のシステムが整っていません。

発達障害の診断は検査だけでは分からないと思っています。診断すべきは診断名ではありません。その子の困りごとが何処にあって、どんな支援を必要としているか、支援の方向性を診断することです。それは簡単ではありません。なぜなら単に認知機能の問題だけではなく、何より関係性の評価が大切だからです。子どもは発達し変化します。簡単に診断するべきものではありません。しかも大学に呼び出されただけでご両親は大きな不安を抱えます。大学の精神科の先生に質問しましたが、そこは時間を掛けて慎重に評価するとは言っていました。

自分が一番残念なのは小児科医としてのアイデンティティを傷つけられたように感じたことでした。体も心もそして発達も加えて環境も全てをトータルで評価できるのが小児科医だと思っています。それを小児科医は体だけ診ればいいだなんて!

そんな理由で4月からの集団健診を僕はボイコットしました。本当は他の小児科医と示し合わせれば良かったのですが、ボイコットしたのは僕一人でした。自分が抜けた分、他の先生の負担が増えてしまいました。なんだか自分が悪者になった気がします。

問題の多い新しい健診システムですが、これまでその問題を解決してこなかった小児科医にも責任があります。小児科医と精神科医が手を取り合ったより良い健診システムができることを望んでいます。