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男子もHPVワクチンを

 しばらく前の話になりますが、母親に連れられHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を希望されて受診した中学生の男子がいました。その子は父親の仕事の都合で海外で暮らしていたそうです。その国では男の子もHPVワクチンを接種していたそうで、帰国後、日本でも当然接種できるものと思っていたそうです。しかし他の医療機関で日本では男性に認可されていないからと断られ、人づてに聞いて当院を受診したのでした。認可されていないと言うことは、もし接種で事故が起きたとき、その補償が出来ないと言うことです。それを説明した上で接種してあげました。

 さて、そのHPVワクチンですが、今度日本でもようやく男性への接種が認可されるようです。何故、男の子に?と思われる方もいらっしゃると思いますが、男性も打つべき理由は大きく2つあります。1つは女性にHPVを感染させないため。もう1つは中咽頭がんや尖圭コンジローマを予防するためです。それだけでなく肛門がんや直腸がん、陰茎がんもそのほとんどがHPVによることが分かってきました。そして海外の先進諸国では男性にもHPVワクチンを接種することは常識となっているのです。

 国が勧奨接種を中止して以降、日本のHPVワクチンの接種率は未だ低いままです。その間に毎年1万人を越える女性が子宮頸がんに罹患し、3000人の方が亡くなり、しかもその数は増加傾向にあります。HPVワクチンが定期接種になった2013年から本来なら救われていただろう多くの女性が子宮頸がんに罹患し、今後も増え続けることを思うと残念でなりません。
 一方先進諸国ではより予防効果の高い9価のワクチンが接種され、子宮頸がんはもはや過去の病気となりつつあります。子宮頸がんはそのうち日本の風土病になるのではないかなんて言っている研究者もいます。行政はHPVワクチンを早くに勧奨接種に戻すか、少なくとも接種意欲を削ぐようなコメントは控えて欲しいものです。

 ところで今年の7月、日本でも9価のHPVワクチンの製造販売が承認されました。しかしコロナ禍の影響でしょうか、発売が遅れていますし、定期接種になる見込みも立っていません。かなり高価なワクチンです。早く定期接種に組み込まれることを期待しています。

注)HPV:ヒト・パピローマ・ウイルス 主に性行で感染します。
  勧奨接種:国が積極的に接種を勧めること 現在HPVワクチンは勧奨されてはいませんが、定期接種から外れたわけではありません。