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ボツリヌス菌と腸内細菌

 先日、ボツリヌス症で亡くなった赤ちゃんのニュースがありました。乳児に蜂蜜を食べさせてはいけないということを知らなかった若いお母さんだったようです。このニュースで赤ちゃんに蜂蜜をあげてはいけない理由がボツリヌス菌だと再確認した方もいらっしゃるのではないでしょうか。では何故、赤ちゃんにはダメで大人だと良いのか。それは蜂蜜の中に高率に存在するボツリヌス菌の芽胞が赤ちゃんの腸内で発芽し、神経毒を産生する。それが麻痺を起こし、呼吸できなくなり亡くなってしまうのです。なぜ赤ちゃんの腸内だと発芽して大人だと発芽しないのかというと、大人では腸の中の細菌叢が発芽を阻止するのだそうです。つまり多様な細菌の存在が発芽を邪魔するのですが、乳児ではその細菌叢が確立していないためボツリヌス菌の芽胞が発芽してしまうのです。

 その腸内細菌の役割について最近いろいろと話題になっています。病原菌の繁殖を抑えるだけでなく、幾つかのビタミンを生成したり、免疫に関与したり。母乳栄養児では腸内細菌は善玉菌の代表であるビフィズス菌が主流となりますが、人口栄養児の腸内細菌は複雑で悪玉菌も存在します。母乳栄養児の方が感染性胃腸炎や風邪に罹る率も少ないことが知られています。逆に乳児への抗生剤の投与はその腸内細菌叢に悪影響を与えます。腸内細菌とアレルギー疾患との関連も示唆されています。

 ボツリヌス症を起こすのは乳児期だけでなく、抗生剤を大量に投与されたときもその危険性が高まるそうです。腸内細菌叢、今流行りの言葉で言えば腸内フローラ。健康を保つには腸の健康も重要。そのためにも赤ちゃんに不要の抗生剤は避けたいものです。

津軽ダム湖:春遠からじ

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 随分と温かくなり、そこかしこに春に息吹が感じられます。土曜日、冬眠させていたバイクを出してきました。路傍の雪も消え、道も乾き、走り初めに津軽ダムまで足を伸ばしました。先日テレビで水陸両用の観光バスの話題をやっていたので、ダムの上の展望施設はもう出来たのかしらと行ってみたのですが、残念ながらそこへと通じる道は閉鎖されていました。ダム湖はまだ厚い氷に覆われ、歩けそうにさえ見えました。しかし氷は岸に近いところで所々割れていて、きっともう何日が暖かい日が続くと湖面が見えて来るでしょう。

 このダムの建設風景を見るのが好きで、何度も通いました。大きなダンプが行き交い、少しずつ高くなって行くダムにワクワクしました。夜、見に行ったこともあります。煌々とライトに照らされ、感動さえ覚えました。先日、あるお母様に工事が終わり転勤することになった、お世話になりましたと外来で挨拶されました。ダム建設のために関東からいらした方でした。着工が平成19年ですから、今年までの10年余の間に二人の子どもが生まれたわけです。その子ども達も随分と大きくなりました。この子達が大人になった時、この津軽ダムを見に来ることがあるかも知れません。自分の父親が建設に関わったこの大きなダムを見て、子ども達は何を思うでしょうか。

 ヘルニアで山を登れない代わり、今年は自転車やバイクで走り回ろうと思っています。そんな訳で大自然レポートはしばらくお休みです。代わりにバイク紀行を書こうかな (^_-)-☆

山岳遭難事故

 先日の高校生のいたましい山の遭難事故。高校生の山の大きな事故はこれまでも何度か起こっています。自分が北アルプスを登っているとき、すぐ側で神奈川の高校生が吹雪の中を迷って遭難しました。岩木山でも半世紀ほど前ですが、やはり吹雪でルートを見失い、4名の高校生が命を落としました。頂上直下にある鳳鳴ヒュッテはそれを追悼して建てられたものです。
 自分自身でも事故は幾つか経験しています。雪庇が崩れ、雪の塊と共に落ちていった後輩の姿が今でも目に焼き付いています。幸い助かりましたが、仲間を死なせてしまったと焦りました。滝谷(穂高の岩登りエリアの一つ)で先輩の落石事故を対岸から見ていました。実際に滑落して命を落とした後輩もいます。山とはそういう所です。山家(やまや)はそれを分かっているので、山の事故は皆、自己責任と覚えています。

 しかし高校生の事故はそれとは少し違うでしょう。彼らは山の本当をまだ知りません。テレビで今回の事故を人災と言っている登山家を見ました。確かにそうかも知れません。しかし自然相手のスポーツです。雪崩の予測は容易ではありません。予測不能なことも起こりえます。だから僕はお互いが自己責任と了解している山仲間でなければ一緒に山を登れないと思っています。

  昨今の中高年の登山ブーム。ツアーを利用して集団で山を登る人達はそれを分かっているだろうかと疑問に思っています。

ともあれ、山に失われた若い命のご冥福をお祈りいたします。
合掌

椎間板ヘルニア

 メルマガには書きましたが、2ヶ月近く前から痛み出したお尻の左側、最初はただの筋肉痛か、あるいは転倒したのが原因かな?と高を括っていたのですが、次第に痛みが強くなり、2週間前に知り合いの整形外科を受診。先週、腰のMRIを撮ってきました。やはり診察での所見通り、腰椎の椎間板ヘルニアでした。椎間板とは背骨と背骨の間のクッション剤のこと。椎間板ヘルニアとはそのクッションの中の綿が飛び出した様なもので、それが脊髄を圧迫し、痛みや痺れがくる疾患です。以前は手術で治療していたのですが、最近は原則として保存的療法、つまり安静にして飛び出した綿が吸収されるのを待つのが一般的です。ただ症状が重い場合は手術になるようです。治るまで3ヶ月から半年と言われました。「やった方が良いことと悪いことは?」と聞くと、「やった方が良いことはない。悪いことは腰に負担が掛かること。」
自転車はOK、スノーボード×、登山は当然×。フィットネスは腰に負担が掛からないものだけOK。

 さてさて、今年は秋まで山はお預けでしょうか。夏に南アルプスを登ろうと考えていたのですが・・・諦めました。しかし筋力が落ちるのは避けなければなりません。そのために自転車は続けるつもりです。山へは行かず、今年はバイクを楽しむことにしましょう。腹筋を鍛えるには・・・馬鹿にしていたスレンダートーンでもやってみようかしら (^_^;

 今は痛み止めが効いているのでそんなことを考えていますが、薬が切れた時は椅子から立ち上がるのもやっとです。動きが鈍くてしばらくは皆様のご迷惑をお掛けするかも知れませんが、ご容赦いただきますようお願いいたします。

それにしても色々トラブルがあるな〜

ニセ医学

 毎月、保険医団体から送られてくる雑誌の先月号の特集は “「ニセ医学」に出会ったら”でした。世の中には「ニセ医学」がはびこっています。特集ではその代表として「サプリメント」や「癌放置療法」、週刊誌の記事「飲み続けてはいけない薬」などが取り上げられていました。我々がそれらの「ニセ医学」に対抗するにはエビデンスに基づいた診療、治療の効果や副作用の分かりやすい説明、患者を叱らない、見捨てない・・・等々色々と書いてありました。

 エビデンス(証拠)に基づいた医療(EBM)ですが、僕はこれがくせ者かなと思っています。どの医者も自分では正しいと信じて医療を提供しているのですが、それが実は正しいとは限りません。例えば食物アレルギーの治療。「食べさせない」から「如何に食べさせるか」というように、この10年で180°と言って良いくらいに変わりました。今から思えば10年前の自分の医療はニセ医学と言っていいかもしれません。だからこそ、最新の情報を求めることが必要ですし、常に今自分が提供している医療を検証して行くことが必要です。そして間違いに気付いたら何時でも修正出来る柔軟性が必要なのです。

さて、あなたが今、病院で受けている医療は本当に正しいものですか?

模擬授業

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 先の土曜日、講演を頼まれたセミナーは発達障害の子ども達の教育に携わっている先生方のセミナーでした。セミナーはまず初めに模擬授業から始まりました。ADHDの特性を持った子ども役の先生とその他の子ども役、そして授業する先生とに別れての模擬授業は僕にとって新鮮で大変興味深いものでした。落ち着きがなく、教師の些細な言葉に反応し、周りの子ども達のことが気になって仕方ない子。そんな子どもを演じる先生も上手でしたが、その子達を相手に授業を進める先生も上手でした。シナリオはありません。全部アドリブ。先生方がいつも教えている子どもを演じているからでしょう。模擬授業はその先生役の授業の進め方の良かったところ、悪かったところを検証するという進行でした。
 当院でもそんな子ども達は沢山来ますが、学校の先生は正直大変だと思いました。そして授業をコントロールする教師の力量にクラス運営は大きく左右されるということが良くわかりました。

 医療機関はもっと学校と密に関わる必要があるようです。学校もそれを望んでいるのかもしれません。今回のセミナーに参加された先生方は大変勉強されていて理解のある先生です。しかし発達障害の子どもの教育に慣れていない先生は少なくないのでしょう。学校と医療機関とそれぞれ考えはあると思いますが、教師と医師では視点が違います。立ち位置が違います。お互いの思いにはずれがあり、すれ違いが生じ、誤解が生じることも少なくありません。セミナーの名称は「特別支援医教連携セミナー」という名称でしたが、残念ながら医療関係者の出席は僕だけでした。主催者のM先生は弘前でも開催したいと仰っていました。もし実現したら、M先生に協力し、広く医療機関にも広報するつもりです。その時はそんな子ども達に関わり、関心のある方々は是非ご参加ください。

完全看護と子どもの心

 日曜日、東京で参加したFOUR WINDSセミナーはロバートソンフィルムを使ったセミナーでした。ロバートソンフィルムとは愛着理論を確立したボウルビィの弟子のロバートソン夫妻によって1950年代から1960年代にかけてイギリスで撮影されたフィルムです。そこには2歳前後の子ども達が母親と分離され、「自分に何が起こっているのか分からない」戸惑いと不安が記録されています。ボウルビィはロバートソン夫妻の仕事を基にして愛着理論を完成させました。フィルムにはそれぞれ観察の対象となった子ども達の名前が付けられています。今回、視聴したのは「ローラ」でした。ローラは2歳5ヶ月の女の子。臍ヘルニアの手術で8日間入院するのですが、当時のイギリスでは子どもの入院に親の付き添いは認められていませんでした。フィルムにはお利口さん過ぎるローラの悲しい気持ちが克明に記録されています。このフィルムがきっかけとなり、イギリスでは子どもの入院に親の付き添いが認められるようになったそうです。

 さて、今の日本では・・・。
ほとんどの病院で子どもの入院に親が付き添うことが許されていますが、中には今も完全看護と称して子どもだけで入院させているところもあるようです。これは大きな問題です。入院だけでなく、点滴や採血の際に母子分離することは多くの病院で行われています。そういった処置が子どもの心を傷つけ、その小さな傷つきの積み重ねでもPTSD(心的外傷後ストレス障害)へと発展することが知られています。我々は子どもの心を守ることにもっと注意を払うべきなのです。

日曜日の東京の空は透き通るように青く輝いていました。
青森空港に降りると車の上には20cm程の雪が積もっていました。冬の津軽の暗い空は大なり小なり人の心にも影響しているのだろうなあ〜 (v_v)

八甲田レポート:樹氷

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 体調が戻り、少しは体を動かせるようになった連休最初の土曜日、山陰の日本海側は大雪で大変だったようですが、津軽は快晴。少しだけでも山の空気を吸いに行こうと八甲田へと出掛けました。病み上がりで無理はしないつもりでしたが、酸ヶ湯から歩き始めると思いの外調子よく、背負ったボードもそれほど重く感じません。おまけにしっかりとトレース(踏み跡)もあり、これなら楽に登られそうだと上を目指しました。

 仙人岱ヒュッテまでと思っていましたが、トレースは山頂へと伸びています。快晴で何人もの登山客が登っていました。頂上直下には滑るのに素敵な斜面が広がっています。柔らかそうな新雪です。ここで引き返すのは心残りと頂上斜面を登り始めました。半分ほど登って流石に息が切れてきました。やはり体力はまだまだ回復していないようです。頂上まであと200mほどのところで上から登山者が一人降りてきました。見ると自分より高齢と思われる女性の方。長靴にスノーシューを履いて、装いも今時の山ガールではありません。近所のおばちゃん風。「いや〜、たいしたものだ」と脱帽しました。

 今年の八甲田は昨年同様、雪が少なく、樹氷も貧弱でした。しかしそれでもスノーモンスター達は青空に映えて白くまぶしく輝いていました。

マスク

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 先日ある会合で、市内に同じ小児科医院を開業している同期のS先生が、「自分も年を取って免疫能が低下して風邪を引くようになった。冬だけでなく、一年中マスクをすることにした」と言っていました。それを聞いて「自分はまだまだ大丈夫」と思っていましたが、しかしそうではなかったようです。3週間ほど前から風邪気味だったのですが、一向に治る気配もなく、先週の木曜日ついに発熱してしまいました。悪寒筋肉痛もあり、てっきりインフルエンザと思いましたが、何度調べても迅速試験は陰性。インフルエンザだったらしばらく休診にするつもりでしたが、翌朝には解熱。まだめまいはありましたが、何とか外来をこなしました。
 発熱の原因は副鼻腔炎。去痰剤と漢方薬を飲み始めたばかりでしたが、間に合わずの発熱。諦めて抗生剤を飲み始めました。しかしそれでも中々軽快せず、一昨日から強い抗生剤を飲み始めました。少しは良いようですが、まだ鼻汁と頭痛は続いています。

 自分の免疫力には自信を持っていたのですが、年と共に衰えてきているのでしょう。しかし自分はマスクでの診察はまだ抵抗があります。言葉と目だけで気持ちを伝えるコミュニケーション力に自信がありません。
特に小さい子ども達に対しては・・・。

マスクは表情を隠し、円滑なコミュニケーションを妨げます。
実はコミュニケーションにおいて、非言語的なコミュニケーションの方が遥かに大きなウエイトを占めていると言われています。
する必要のない場所で、誰もがマスクをしている日本の社会が僕は心配になるのです。
副鼻腔炎は人にうつす感染症ではないので、相変わらずマスクをしないで診療していました (^_^;

 日曜日、晴れ上がった空を恨めしく見上げながら、岩木山を撮っていました。

見逃されている汗の役割

 土曜日、つがる小児科医の会で杏林大学の皮膚科名誉教授、塩原哲夫先生を招聘し、「アトピー性皮膚炎におけるスキンケア」と題した講演会がありました。副題が「見逃されている汗の役割」

 学生時代、汗腺にエクリン腺とアポクリン腺の二つがあると教わりましたが、その役割についてはほとんど忘れていました。
「エクリン腺は全身に広く分布し体温調節を行う。アポクリン腺の分布は腋窩などに限られ、ヒト以外の動物では芳香腺として機能する。」
講演はそのアポクリン腺の話しでした。実はアポクリン腺が皮膚の肌理(きめ)に関係しているというのです。アポクリン腺から出る汗が皮膚に水分を補給し潤いを持たせる。アポクリン腺の汗を充分にかくことで皮膚の肌理が良くなる。
 皮膚の肌理の良い県の1位は広島、2位が島根、3位が鳥取。年間を通して湿度の高い気候がお肌美人を作るのだそうです。青森も湿度が高い県だそうですが、冬の青森は外は湿度が高くても、暖房している部屋の中は乾燥していますよね。

 さて、その皮膚の肌理を良くする汗をかくにはどうするか。一番ベストが43℃の足浴だそうです。暑いお風呂に入ると汗はかくが、それは体温調節に関与するエクリン腺の汗。足浴はじんわり体が温まり、良い汗をかくのだそうです。
 保湿剤も効果有りですが、保湿剤で随分と効果が違うようです。ヒルドイドクリームがベスト。ジェネリックの効果はその3分の1。僕がいつも処方するヒルドイドのソフト軟膏はクリームより少し効果が落ちるとか。昔はクリームを処方していましたが、ソフト軟膏の方が滑らかで塗り心地が良いので、最近はもっぱらソフト軟膏を処方していました。自分自身、乾燥肌で軽いアトピー。かゆがりで毎日ヒルドイドソフト軟膏で保湿していましたが、またクリームを試してみようかなと考えていました (^_^)v