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模擬授業

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 先の土曜日、講演を頼まれたセミナーは発達障害の子ども達の教育に携わっている先生方のセミナーでした。セミナーはまず初めに模擬授業から始まりました。ADHDの特性を持った子ども役の先生とその他の子ども役、そして授業する先生とに別れての模擬授業は僕にとって新鮮で大変興味深いものでした。落ち着きがなく、教師の些細な言葉に反応し、周りの子ども達のことが気になって仕方ない子。そんな子どもを演じる先生も上手でしたが、その子達を相手に授業を進める先生も上手でした。シナリオはありません。全部アドリブ。先生方がいつも教えている子どもを演じているからでしょう。模擬授業はその先生役の授業の進め方の良かったところ、悪かったところを検証するという進行でした。
 当院でもそんな子ども達は沢山来ますが、学校の先生は正直大変だと思いました。そして授業をコントロールする教師の力量にクラス運営は大きく左右されるということが良くわかりました。

 医療機関はもっと学校と密に関わる必要があるようです。学校もそれを望んでいるのかもしれません。今回のセミナーに参加された先生方は大変勉強されていて理解のある先生です。しかし発達障害の子どもの教育に慣れていない先生は少なくないのでしょう。学校と医療機関とそれぞれ考えはあると思いますが、教師と医師では視点が違います。立ち位置が違います。お互いの思いにはずれがあり、すれ違いが生じ、誤解が生じることも少なくありません。セミナーの名称は「特別支援医教連携セミナー」という名称でしたが、残念ながら医療関係者の出席は僕だけでした。主催者のM先生は弘前でも開催したいと仰っていました。もし実現したら、M先生に協力し、広く医療機関にも広報するつもりです。その時はそんな子ども達に関わり、関心のある方々は是非ご参加ください。

完全看護と子どもの心

 日曜日、東京で参加したFOUR WINDSセミナーはロバートソンフィルムを使ったセミナーでした。ロバートソンフィルムとは愛着理論を確立したボウルビィの弟子のロバートソン夫妻によって1950年代から1960年代にかけてイギリスで撮影されたフィルムです。そこには2歳前後の子ども達が母親と分離され、「自分に何が起こっているのか分からない」戸惑いと不安が記録されています。ボウルビィはロバートソン夫妻の仕事を基にして愛着理論を完成させました。フィルムにはそれぞれ観察の対象となった子ども達の名前が付けられています。今回、視聴したのは「ローラ」でした。ローラは2歳5ヶ月の女の子。臍ヘルニアの手術で8日間入院するのですが、当時のイギリスでは子どもの入院に親の付き添いは認められていませんでした。フィルムにはお利口さん過ぎるローラの悲しい気持ちが克明に記録されています。このフィルムがきっかけとなり、イギリスでは子どもの入院に親の付き添いが認められるようになったそうです。

 さて、今の日本では・・・。
ほとんどの病院で子どもの入院に親が付き添うことが許されていますが、中には今も完全看護と称して子どもだけで入院させているところもあるようです。これは大きな問題です。入院だけでなく、点滴や採血の際に母子分離することは多くの病院で行われています。そういった処置が子どもの心を傷つけ、その小さな傷つきの積み重ねでもPTSD(心的外傷後ストレス障害)へと発展することが知られています。我々は子どもの心を守ることにもっと注意を払うべきなのです。

日曜日の東京の空は透き通るように青く輝いていました。
青森空港に降りると車の上には20cm程の雪が積もっていました。冬の津軽の暗い空は大なり小なり人の心にも影響しているのだろうなあ〜 (v_v)

見逃されている汗の役割

 土曜日、つがる小児科医の会で杏林大学の皮膚科名誉教授、塩原哲夫先生を招聘し、「アトピー性皮膚炎におけるスキンケア」と題した講演会がありました。副題が「見逃されている汗の役割」

 学生時代、汗腺にエクリン腺とアポクリン腺の二つがあると教わりましたが、その役割についてはほとんど忘れていました。
「エクリン腺は全身に広く分布し体温調節を行う。アポクリン腺の分布は腋窩などに限られ、ヒト以外の動物では芳香腺として機能する。」
講演はそのアポクリン腺の話しでした。実はアポクリン腺が皮膚の肌理(きめ)に関係しているというのです。アポクリン腺から出る汗が皮膚に水分を補給し潤いを持たせる。アポクリン腺の汗を充分にかくことで皮膚の肌理が良くなる。
 皮膚の肌理の良い県の1位は広島、2位が島根、3位が鳥取。年間を通して湿度の高い気候がお肌美人を作るのだそうです。青森も湿度が高い県だそうですが、冬の青森は外は湿度が高くても、暖房している部屋の中は乾燥していますよね。

 さて、その皮膚の肌理を良くする汗をかくにはどうするか。一番ベストが43℃の足浴だそうです。暑いお風呂に入ると汗はかくが、それは体温調節に関与するエクリン腺の汗。足浴はじんわり体が温まり、良い汗をかくのだそうです。
 保湿剤も効果有りですが、保湿剤で随分と効果が違うようです。ヒルドイドクリームがベスト。ジェネリックの効果はその3分の1。僕がいつも処方するヒルドイドのソフト軟膏はクリームより少し効果が落ちるとか。昔はクリームを処方していましたが、ソフト軟膏の方が滑らかで塗り心地が良いので、最近はもっぱらソフト軟膏を処方していました。自分自身、乾燥肌で軽いアトピー。かゆがりで毎日ヒルドイドソフト軟膏で保湿していましたが、またクリームを試してみようかなと考えていました (^_^)v

メタ・ポジション

 日曜日、日帰りで盛岡へ行き、日本小児科医会のカウンセリング講習会に参加してきました。今回のテーマはブリーフセラピー。ブリーフセラピーとは短時間で問題の解決を図る心理療法で、短期療法と訳されています。以前にもこのコーナーで紹介したことがあったかな?
さて、今日のタイトル、メタ・ポジションはその講習会で出てきた単語です。ネットを検索すると、「メタ・ポジションとは自分でも他人でもない、第三者的な立場、客観的な立場、あるいは自分が存在する世界をも超越した俯瞰的な場所や立場のことです」とありました。
常々、俯瞰的に診療したい、自分が診療している姿をまるで上から見下ろしているように、自分の診療を自身で客観的に評価しながら診療したいと考えていましたから、その言葉が僕の心にヒットしました。診察も人対人の関係ですから、そこにはお互いの感情も入るのは当然で、それが過ぎると客観的な評価が出来ないのではないかと思うのです。もちろん感情を共有し、笑い、泣き、する事も大切ですが、そうしながら俯瞰的な眼を持っていたいと考えていました。つまり診療には内省が必要と考えているということです。もっと視覚的に言えば幽体離脱しながら診療する (^_^;)
しかしそれはとても難しいのです。

久々の「院長のひとこと」の更新です。
春から診療時間は短くしたのですが、自分の力量の問題か、なんだか以前にも増して日々忙しく感じる今日この頃です。
明日は急患診療所の当番ですが、今度の日曜日は久し振りにフリーの休日です。山へ行こうと思っています。大自然レポートをお届けしますね (^_-)-☆

世界三大夜景

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昨年、自分が主催し弘前で開催されたFOU RWINDS乳幼児精神保健学会、今年の開催地は長崎でした。大会のテーマは「いま、ふたたび愛着について考える」
大会で自分がもっとも印象に残ったのはシンポジウムのテーマだった愛着と甘えの考察でした。
その違いとは・・・
愛着が一方向であるのに対し、甘えは双方向。つまり愛着は一方通行の感情であるのに対し、甘えはお互いが影響し合う感情。例えば物にだって愛着の感情は起こるが、甘えの感情は起こらない。
澤田敬先生が日頃から「甘えは間主観性の世界」と言っていた意味がようやく分かりました。前々からのアタッチメントと愛着、そして甘えについてのモヤモヤしていた思いが整理された有意義な大会でした。

さて、長崎は世界三大夜景の一つとして知られています。懇親会の後、スタッフと夜景の見える稲佐山に登りました。(もちろんタクシーで)
確かに見応えのある素晴らしい夜景でした。街は異国情緒あふれた独特の雰囲気で、今度はゆっくりと観光目的で訪れたいと思いました。
カステラも美味しかったですよ (^_-)-☆

小児科医の役割とは

 東北6県に新潟、北海道を加えた8つの県、道の小児科医会が集まる東北・北海道小児科医会連合会。年1回の総会を各県持ち回りで開いています。前の土日、秋田市でその総会が開催されました。その総会では毎年テーマを決めてシンポジウムが開かれます。今年のシンポジウムのテーマは「小児科医の近未来を語ろう」。実は多くの小児科医、特に開業小児科医が自分たちの未来について不安を抱いているのです。
 今年の春、青森県の小児科医会の会長K先生に今年の青森代表のシンポジストを頼まれました。さすがに二つ返事というわけには行きませんでしたが、テーマがテーマだけに若い先生には頼まれないと言われ、仕方なしにシンポジストを引き受けました。とはいうものの、「小児科医の未来?さて、何を話そうか」と悩んで決めたのが子どもの心の診療についてでした。主催者側は新しく始まった地域総合小児医療認定医制度の話しに持って行きたかったようですが、僕はその制度にあまり興味がありませんでした。そこで当院で今年の春から始めた「子どもの心相談室」のことを話し、全ての小児科医が子どもの心の診療に取り組むべきだと主張しようと考えたのです。

 僕のプレゼンテーションのタイトルは「一小児科医がチームで診る子どもの心」。僕の話は、それなりにインパクトはあったようです。しかし会が終わってロビーで知り合いの若手の先生に言われました。「ハードルが高すぎる」と。それを聞いて初めて僕は自分のプレゼンが失敗だったと悟ったのでした。
僕は子どもをその症状だけでなく、心身の発育発達、家庭・家族環境と全ての側面から多角的、総合的に診ることが出来るのは小児科医だと主張したかったのです。そしてどの小児科医も子どもの心に常に配慮するべきだと。しかしそれと自分の実践報告に乖離があったのでしょう。もっと親しみやすいプレゼンにすれば良かった反省したのでした。

 日曜日、秋田から帰る道すがら沢山のバイクとすれ違いました。「今日は晴れて絶好のバイク日より。きっと八甲田の紅葉も今がベストだろうなあ」とちょっと嫉妬しながらライダー達を眺めていました。

罰金100円

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土曜日から秋田に出掛け、甘えと間主観性研究会に参加してきました。
今回のタイトルはその研究会での渡辺久子先生の講演で出てきたフレーズです。
罰金100円というのは、「母親は父親の悪口を子どもの前で言ってはいけない。違反したら罰金100円」ということ。「それでお金が貯まったら家族でお出かけすれば良い。」皆、分かっていてもつい子どもの前でパートナーの悪口を言ってしまっていませんか?自分が大好きなお母さんに、大好きなお父さんの悪口を言われると子どもは混乱します。もちろんその逆の、父親が母親の悪口を言うのはもっと重大な違反です。子どもを取り巻く、幾重もの環境の一番内側が家族です。そこにほころびがあれば、子どもの心に直接悪影響を与えます。「結婚してから相手の欠点に気付いてからでは遅すぎます。結婚する前に半年くらい同棲すれば良い」・・・(O_O)
いつもながらに過激な久子先生でしたが、今回もパワフルでした。

今回の他の久子語録を幾つか紹介しましょう (^_-)-☆
「子どもの全てを受け止めるのが小児科医」  これは良いなあ \(^O^)/
「忘れ物をするのが子ども」         そうだよね
「塾は子どもの時間を奪う」         全く!
「インターネットは育児に禁物」       同感!

自己肯定感、倫理観は乳児期に創られます。
その乳幼児期に大切なこと3つ 
1つ目は関係性、2つ目も関係性、3つ目もやはり関係性。
親子の関係性が子どもの心を育てるのです。
その親子の関係性を見守るのが小児科医院であり、園であり学校であるべきなのでしょうね。

ビタミンDと日光浴

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 皆さんも“くる病”という病名を聞いたことがあると思います。5月中旬に札幌で開催された日本小児科学会でそのくる病がシンポジウムの一つで取り上げられていました。くる病はカルシウムの骨への沈着が障害されておこる病気です。くる病の赤ちゃんでは頭の骨が柔らかくなり、幼児では高度のO脚をきたします。大人では骨軟化症。原因として多いのはビタミンD欠乏。これまでは稀と考えられていましたが、最近それが問題になってきているようです。

 ビタミンとは体に不可欠な栄養素です。多くのビタミンをヒトは自分で作ることができませんが、このビタミンDは自分自身で作ることができます。皮膚で紫外線の力でコレステロールから合成されるのです。またビタミンDはキノコ、魚類からも摂取することができますが、必要量の80〜90%は皮膚で合成されるのだそうです。しかし近年、紫外線の有害な面が指摘され、それに反応し過度に日焼け予防をしてしまうと必然的にビタミンDが欠乏してしまいます。
 また、母乳に含まれるビタミンDはごく微量です。母乳栄養児でしかも魚のアレルギーがあり、冬の東北地方日本海側、あるいは極端な紫外線対策はくる病を起こしやすくなるのです。

 最近、ビタミンDの免疫に対する働きも色々と調べられているようです。インフルエンザの予防や癌予防、自己免疫疾患、アレルギー疾患の予防、あるいはアトピー性皮膚炎への治療効果も言われています。

 乳児のビタミンD不足はくる病だけでなく、将来の様々な病気を引き起こしてくる可能性もあります。適度な日光浴は必要のようです。赤ちゃんにビタミンD補充が勧告されている国もあるとか。最近は日本でも赤ちゃん用のサプリメントとして市販されているようです。
http://babyd.jintan.jp


 写真は札幌に住む旧友Yと一緒に行ったビール園で。ジンギスカンもビールも最高に美味しかったですよ (^_^)v

子どものトラウマと心理発達

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 日曜日、カナダのトロント大学精神科准教授、キャスパー・チューター先生の講演会に参加してきました。テーマは“子ども時代のdisplacement、及びそのパーソナリティ形成に及ぼす影響”
displacementとは強制的に移住されること。戦争や災害で故郷を追われ、無理矢理、別の土地に移住させられた家族の中の子ども達の心理発達がテーマでした。今の日本でも5年前の震災で故郷を離れざるを得なかった人、福島のように帰りたくても帰れない家族が沢山います。今回の講演はそれを踏まえての講演依頼だったと理解しました。
 講演の中でチューター先生は子に掛かるトラウマ状況の影響はそれに対処する両親のキャパシティに左右されると述べていました。家族にストレスに対処する力があれば乗り越えられるということでしょう。戦争や災害からくる大きなトラウマもありますが、引っ越しなどのdisplacementも低レベルのトラウマになりえます。
 両親が十分な情緒的包容力を持たない場合、それらのトラウマが子どもの人格に大きな影響を与える可能性があります。そうすると良いか悪いかのどちらかだけに分裂し、白か黒しか認めない窮屈な人格が出来てしまいます。健全な人格の発達には*乳児にとって安全で穏やかな首尾一貫した環境があること、*食事、暖かさ、快適さ、静けさといった身体的現実的な面と同時に、母/両親と乳児との優しい体の触れ合いを通して感情的な側面が育まれることが必要です。安全基地を与えることが出来なくてはならないのです。

 さて、振り返って僕は小さい頃から引っ越しと転校を繰り返してきました。おそらく僕の両親はそれに対応するキャパシティを持っていたのだと思いますが、その体験は自分の性格に多少なりとも影響を与えているのではないかと思うのです。
春、転勤で弘前から離れる人、新しく来る人が多いこの時期、それが子どもに重大な影響を与えることのないよう、我々は上手に支える必要があるのではないかと思いました。

 写真は講演会が始まるまでの空いた時間でスタッフと行った世田谷の豪徳寺の観音様です。このお寺は招き猫のお寺として知られ、観音様の周りには願いを叶えた沢山の招き猫が奉納されていました。
招き猫に囲まれ、観音様はにっこり笑っていました。

行き違い

 5年前、僕の呼びかけで結成されたつがる小児科医の会、年に3,4回の学術講演会を開催してきました。先週土曜日はその第16回目の学術集会でした。発達障害で著名な平岩幹男先生をお招きしての講演会でした。今回は弘前自閉症スペクトラム支援ネットとの共同開催ということで、小児科関係者だけでなく療育関係者も参加し60名以上の大きな会となりました。その平岩先生のお話から。

行き違い
 平岩先生は患者や家族の思いと医療機関の考えとの間には行き違いがあるとお話しされました。自閉症の子を持つ家族はその治療と将来の展望を期待して医療機関を受診されます。しかし自閉症に根本的な治療があるわけではなく、医療機関はただ検査と診断をして「様子を見ましょう。長い目で見守りましょう。温かく見守りましょう」と話して帰すだけ。そこには大きな行き違いがある。
それは医療機関が子どもと家族の困りごとに対して何も具体的な対応の指示が出来ないからではないのか。自閉症の診断より困りごとのへの対応が必要。それが改善するのなら診断はなくても構わない!!

 正に日頃、僕が考えていることそのものでした。先生は療育機関を紹介することなく、ご自分のクリニックで、一人で子ども達とその家族に向き合い、オーダーメイドで対応を考えて指導(練習してもらう!)しているのだそうです。治療薬を使うことも少ないと。そして子ども達のself-esteem(自尊感情)を傷つけない、高めることが一番大切と。
 何より感心したのは平岩先生が子どもの観察に掛ける時間の長さでした。じっくりと観察し、その子がどこに困りごとを感じているかを探り、そしてその子にあった方法を考え、それをお母さんにも練習して貰うのだそうです。

 講演はその具体的なアドバイスが満載でした。それは何も自閉症の子ども達だけに使えるものではありません。どの子に対しても役に立つもので、早速外来で色々と試していました。
「注射、頑張れる人は手を上げて」「はーい」なんてね (^_-)-☆