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誤学習

 子どもの心研修会は日本小児科医会が企画する全国の小児科医を対象とした子どもの心を学ぶ研修会です。毎回、素晴らしい講演が聴けるのでできる限り参加するようにしていました。今日の話題は先週東京で開催されたその研修会から。

 まず、今日のタイトルの誤学習とは。
 例えば子どもがスーパーで玩具を欲しがるとします。最初は「この前、玩具を買ったばかりでしょ」と子どもの要求をつっぱねます。子どもは「買って、買って」としつこく迫る。それでも買ってもらえないと分かると今度は床にひっくり返って「買って〜」と泣き叫ぶ。親は根負けし、「分かったからもう止めなさい。今度だけよ」と買ってあげる。よくありそうな光景ですが、子どもはこの時、床にひっくり返って泣き叫べば自分の要求が通ると学習します。それを誤学習と言います。

 今回の研修である講師が、親の誤学習という話しをしていました。例えば、子どもが言うことを聞かない時、叩いて厳しく叱る。子どもは怖くて言うことを聞く。親は子どもは叩いて叱ればいうことを聞くと学習してしまう。これが親側の誤学習。なるほどと頷きました。確かにそうですよね。誤った方法でたまたま上手くいったとしてもそれは根本的な解決とはならないし、次も上手くいくとは限りません。子どもの心の中で不満は蓄積して行きます。そのうち成長し体が大きくなると、もう叩いていうことを聞かせられなくなる。そして蓄積した不満が爆発し、親はそれをコントロール出来ず、問題行動へと発展するなんてこともあります。体罰は根本的な問題解決にはなりません。叱る時は理由を説明し、行動を叱ることが必要です。本人を否定するようなしかり方は自尊感情を低くするだけです。叱る時はあなたが大切だから叱るのだと伝えましょう。

八甲田レポート:初夏

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 梅雨空の続く南の人には申し訳ないほど、清々しく晴れた日曜日、久し振りで八甲田を登ってきました。今年は学会の準備やら何やらいろいろで、なかなか山へ行けません。前回、登ったのは5月下旬。まだ雪の残る季節でした。2ヶ月近くたって、木々の緑もますます濃く、すっかり山は夏の装いでした。今年もまた毛無岱湿原のお花畑を見逃しました。

 しかしその代わり、毛無岱ではワタスゲのふわふわの毛玉が風に揺れていました。稜線ではヨツバシオガマやミヤマオダマキなどの夏の花が色鮮やかに咲いていました。仙人岱の雪渓が溶けた後にはチングルマやイワカガミが咲き、この季節の八甲田は一年で一番花の種類が多い季節です。

夜景

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 函館へは何度も行っているのですが、その夜景は中学校の修学旅行で見て以来、一度も見る機会はありませんでした。当時、バスで登るに連れて木々の間に見える灯りに息を飲んだのを今も覚えています。
 日曜日、FOUR WINDSの秋の弘前大会の宣伝も兼ねて、函館まで遠征し、ロバートソンフィルムの学習会を開催してきました。前の晩に函館入りし、翌日の学習会に備えました。スタッフと一緒にお寿司屋さんで食事した後、函館の友人が函館山に連れて行ってくれました。しかし生憎の雨模様。夜景の美しさは半減していましたが、それでも傘を差しながら見た夜景は良い思い出として残るでしょう。

 青森県にも夜景の綺麗なスポットが沢山あります。むつの釜臥山からのアゲハチョウは有名ですが、平川の志賀坊高原からの夜景も夕日が岩木山沈んだ後に街の明かりが輝き出すのが美しいです。
 自分としては羽田空港に降りる時に見える川崎の工場の灯りも近未来的で美しいと感じますが、なぜ夜景を美しいと思うのでしょう。暗闇が不安や恐怖の象徴なら、灯火は安堵、安心、進むべき方向を示す目印でしょうか。
丘から見下ろす夜景は美しいと感じますが、写真で見る宇宙からの地球の夜景は電気の無駄遣いのようで醜悪に感じてしまいます。身勝手ですね。

 さて、学習会の方は好評でした。ロバートソンフィルムの威力でしょう。このフィルムは2歳前後の子ども達が親と引き離された時、どのような表情、どう変化するかを克明に記録したイギリスの古いフィルムです。子どもと関わる職種、全ての方にとって必見です。しかし先日、若い小児科医にフィルム学習会の話しをしましたが、あまり興味を示してくれなかったなあ〜 (T_T)

今週は残念な写真になってしまいましたが、気持ちだけ (^^ゞ

子どもが子どもを生きること

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 「まず腕白小僧を育てないと、良い人間を育てることは出来ない」
ジャンジャック・ルソーの言葉です。土曜日に開催されたFOUR WINDS青森の特別講演会で渡辺久子先生が引用されていました。腕白小僧を育てるにはAKUが必要。AKUとはA(あぶない)、K(きたない)、U(うるさい)。AKU(悪)を制御できると大人になる・・・。
 講演会は100名以上の参加者があり、希望者を途中から断らざるを得ませんでした。もっと大きい会場を用意すれば良かったとちょっと後悔。
しかしそれほど広くない会場のお陰か先生も聴衆の顔がよく見えたそうで、食い入るように聴いてくれている参加者に先生の話しも熱を帯び、予定時間を遙かにオーバーして2時間半もの長い講演会となりました。しかしアンケートにはほとんどの方が長く感じなかったと書いてくれました。

僕のノートには他にも沢山のフレーズがメモしてあります。
こころ、脳は関係・環境・体験で作られる。
欧米は母親の子宮のような社会を作っている。
人は間主観性という言語的コミュニケーションにより、響き合いながら生きるもの。
赤ちゃんは相手の意図と雰囲気を見抜く。赤ちゃんを尊重しよう。赤ちゃんは既に7ヶ月でプライドを持つ。
父性は家庭に必要。父親の育児参加で子どもが二十歳になった時、遙かに自己肯定感、社交性が高くなる。
まだまだありますが、この辺で。

 久子先生には秋のFOUR WINDS全国学術集会でも基調講演をお願いしました。弘前大会には他にも著名な何人かの先生をお呼びし、心の「響き合い」というテーマの下、よくこれだけのプルグラムを作れたものだと自画自賛しています。
是非、沢山の方々が参加してくれることを願っています。
大会HPは次の通りです。
http://www.j-kodomo.com/FOURWINDS_Hirosaki/

小山先生のこと

 僕の高校生の頃の話しです。友人と野鳥観察をしようということになりました。その頃はまだバードウォッチングなんて洒落た言葉はありませんでした。お小遣いで買った安い双眼鏡を首に下げ、森を歩いていた時に出会ったのが小山先生でした。先生と親しくなり、仲間達と「千歳野鳥の会」なるサークルを作り、日曜日には毎週のように先生と森を歩きました。大学で山岳部に入ったのも、山へ行けば変わった野鳥が見られるかも知れないと思ったからでした。その頃、先生は養護学校に勤めていらっしゃいました。生物学が専門で、部屋には沢山の蜘蛛の標本がありました。趣味はカメラとギター。穏やかな暖かい先生でしたが、奏でるギターの音は激しく、ユパンキの曲を僕たちの前で演奏してくれました。
 大学受験で理学部の生物学科と医学部を受かった時、迷って先生に相談しました。生物学はやりたかったけど、打差的に考えると医学部を選ぶべきかと迷っていたのです。先生は「医者も面白いよ。子どもにお薬を出す時は体重やら何やらで、その子その子で違うんだよ」と教えてくれました。今思うと、小児科医としての自分のスタートはそこだったのかも知れません。間違いなく自分に大きな影響を与えてくれた先生の一人です。

 先日、親しい友人から連絡がありました。小山先生が亡くなったと。ネットで小山先生のことを調べていて知ったそうです。そして先生の歌をYouTubeで聞くことが出来ると教えてくれました。教えられた通りに検索し、YouTubeを開いてみると、そこには懐かしい小山先生の歌声がありました。良い曲でした。先生はきっと素敵な人生を生きたのだと思えました。もし良かったら皆さんも聞いてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=NjDZHuJfkZ0

「遠い流れに」
   1998年作 詩:小山心平/曲:北インド伝承曲

いつの日にか 遠い流れに
舟浮かべ 旅立とう

山ふところの 小さな村に
思い出を 残して

私は今 静かにゆれ
みなも遥か 彼方まで

時は止まり 夢の中を
川は流れ つづける


何もいらない あなたといれば
二人の旅が 続くから

夜空の星に 届けよ願い
語り合う ひととき

私は今 静かにゆれ
波の音を どこまでも

時は止まり 夢の中を
川は流れ つづける


どこを行くのか 遠い流れは
あまたの出会い また別れ

果てることのない いのちの大河
さだめのまま とうとうと

私は今 静かにゆれ
まぶた閉じて いつまでも

時は止まり 夢の中を
川は流れ つづける

川は流れ つづける

メーリングリスト

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 今、いくつかのメーリングリスト(ML)に入っています。全国の小児科医のMLや予防接種のML。他にも病児保育のMLや禁煙支援のML、津軽の小児科医のMLなどなど。秋のFOUR WINDS弘前大会準備のために自分で作ったMLもあります。中でも最大の全国の小児科医のMLの会員はおそらく3000人を越えているでしょう。会員数が多いこともあって毎日の投稿数は3,40通にもなります。とても全部は読んでいられませんが、しかし新しい情報も沢山あり、随分と勉強になっていました。
 その最大のMLの管理者からサーバーを変更するとの連絡がありました。うっかり更新を忘れていたら6月に入りメールが入らなくなりました。随分と静かでした。それでも他のMLや広告のメール、業者のメルマガなど入るのですが、メールの数は激減。平和だ〜。更新せずこのままでも良いかも、とつい思ってしまいましたが、やはり貴重な情報源です。これから自分でそのMLに秋の学会の宣伝をしなければならないし、と思い直し更新したのでした。

 思えば今の世の中、様々な情報であふれています。ややもするとそれらに振り回されそうになります。いや既に振り回されていると思った方が良いでしょう。通信手段も携帯電話が出来て、四六時中拘束されているようです。一昨年の夏、1週間北アルプスを登った時、山の上で、「今日は携帯つながるかな〜?」と毎日電源を入れていました。まあ安否を知らせたいという思いもあったのですが、僕も携帯依存症なんですね、きっと。もう逆戻りは出来ないでしょうが、昔は平和だったとつい懐かしんでしまうのでした。

八甲田レポート:早春

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 先の日曜日、晴れて暑くなると天気予報で聞いて、涼しいうちに登ろうと早くに家を出ました。運動会だった学校も多かったようですね。朝早かったせいか、昼近くになるまで誰とも出会いませんでした。少雪とはいえこの季節、まだ登山道の多くが雪に隠れ、迷いやすいこともあり、元々登山客は少ないのです。毛無岱湿原の木道を1人で歩いていると美しい庭園のような大自然を独り占めしているような気がして、この上のない贅沢をしているような幸せな気分でした。
 最近、山を登る時はいつも1人です。決して誰かと一緒に登るが嫌いというわけではありません。気の合った2、3人の仲間と登るが気楽で良いのですが、近くに僕のような山登りをする人が居ないだけです。ただ、大勢でガヤガヤと登るのは好きではありません。振り返ると自分は社交的な方ではなく、どちらかと言えば内向的、かといって決して排他的でもなく・・・、自分の愛着パターンは安定型ではなく回避型なのだろう。では何故、自分の愛着パターンは回避型なのだろうなどとあれこれ考えながら歩いていました。

 左の写真は毛無岱のミズバショウ。右は八甲田大岳です。マンサクはほとんど咲き終わり、ミズバショウとショウジョウバカマが咲き始めたところでした。

ワクチン情報

 以前、紹介した髄膜炎菌ワクチン(4/1のブログ)が発売になりました。髄膜炎菌感染症についてはその記事をご覧ください。推奨年齢は米国と同じに11歳から12歳に初回接種。追加が16歳。2歳未満の乳幼児が接種する場合は初回接種の後2ヶ月後に2回目を接種するそうです。
 国内の発症は多くはありませんが、寮生活を送る思春期の子ども達は受けた方が良いかも知れません。特に欧米などの海外で生活する場合は受けるべきでしょう。米国へ留学する場合は接種することを求められるそうです。
 当院を掛かり付けにしていてスペインへサッカー留学した子がいましたが、今だったら受けることを勧めたでしょう。ただ接種費用がかなりの高額です。当院では1回の接種に付き、23,000円を予定しています。

 海外のワクチンメーカーは日本に新しいワクチンを売り込むことでかなり利益を得ているそうです。なんとか安くならないものでしょうか ( -_-)

 さて、もう一つ。以前から噂になっていたB型肝炎ワクチンの定期接種化が決まりそうです。ただし対象となる年齢は1歳未満になりそうだとか。来年の4月までに1歳以上となる子は対象から外れてしまうわけですが、接種は何歳でも可能です。小さい子の方がより有効です。B型肝炎ワクチンは単に肝炎を予防するワクチンではありません。将来の慢性肝炎→肝硬変→肝癌を予防するワクチンです。現在日本では毎年3000人の方が、B型肝炎が原因の肝癌で亡くなっているそうです。世界では既に多くの国で定期接種化されています。それらの国では肝癌が激減しているそうです。1歳未満だけに限定した定期接種化では、日本で肝癌が減少するには更に数十年掛かりそうです。
保育園で知らないうちに感染してしまうこともあります。費用は掛かりますが、任意でも接種することをお勧めします。

渡辺久子先生の講演会のお知らせ

 これまでこのブログでも何度か取り上げてきた渡辺久子先生の講演会を企画しました。秋のFOUR WINDS弘前大会のプレ企画第2弾です。
(第1弾は澤田敬先生、1月17日のブログで紹介しました。)

講演会の日時と会場は次の通り。
日時:6月13日(土)14:00〜16:00
会場:弘前市民文化交流館(ヒロロ4階大ホール)
参加費:500円

講演のタイトルは
「子どもが子どもを生きること:甘えと遊びと愛着の基礎について」

とても素敵なタイトルでしょ。久子先生は昨年、慶応大学小児科を定年退職されましたが、今も若々しく精力的に乳幼児の精神保健にご尽力されていらっしゃいます。先生の講演は毎回胸の熱くなるお話しで、是非、多くの方々に講演会に参加していただきたいと思っています。
お申し込みはFAX(0172-29-3114)かメールでお願いします。
メールはHPのお問い合わせでお願いします。

兄弟げんかの仲裁方法

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 GWの初日、学習センターでCAPの講演会がありました。CAPとはChild Assault Preventionの略で、そのHPにはCAPとは子ども達がいじめ、痴漢、誘拐、虐待、性暴力といったさまざまな暴力から自分を守るための人権教育プログラムとあります。1978年にアメリカで起きたあるレイプ事件がきっかけになって、CAPのプログラムの原型が作られたそうです。講演会はそれを日本に広めた森田ゆり先生のお話しでした。今日はそこで学んだ直ぐに役立ちそうな情報を紹介します。

 それは兄弟げんかの仲裁方法。よくある親の対応は「どっちが先に手を出したの?」と犯人捜しし、先に手を出した方に謝らせたりすることです。しかしそれでは子どもの気持ちは修まらず、本当の解決にはなりません。そんな時はまず最初に、「○○ちゃんはどんな気持ちなの?」と聞きます。そして相手にそのまま「○○ちゃんはこれこれの気持ちなんだってよ」と伝えます。そして次に「何を言いたいの?」と聞きます。そしてそのまま「○○ちゃんはこう言いたいんだってよ」と伝えます。最後に「どうして欲しいの?」と尋ね、それをそのまま同じように「○○ちゃんはこれこれして欲しいんだってよ」と伝えます。
それぞれに気持ちを聞いてあげて、どう言いたいのか、何をして欲しいのかを言葉で伝え合う(代弁してあげる)ことで二人とも気持ちが楽になり自然に喧嘩は収まります。この方法は兄弟げんかだけでなく、いろいろ他に応用できそうですね。


 ところでその講演会で森田先生が「虐待の世代間連鎖」はないと言い切っていました。そのフレーズは今では誰もが知っています。しかし被虐待者が自分の子を虐待するのは33%にすぎず、それでは世代間連鎖があるとは言えないと。僕はそれは少し違うと思いました。なぜなら虐待を受けていない人が自分の子どもを虐待する率はそれより遙かに少ないでしょうから。むしろ33%を多いと思うべきです。しかし被虐待者がその「虐待の世代間連鎖」という言葉に囚われ家庭を持てない人がいる、言葉の呪縛ということに気付かされました。心のケアと同時にその呪縛を解いてあげることも必要なのでしょうね。

写真は百沢スキー場の一本桜。あいにくカメラを持って行かず、スマホで撮りました。最近のスマホはよく撮れますね。