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マイ保育所

 以前、新聞でも報道されましたが、県のモデル事業としてマイ保育所なるものが、10月1日から津軽地域のいくつかの保育園で実施されます。その内容は体調不良児の預かりと代理受診。体調不良児とは微熱や少しの下痢程度の症状の軽い児のこと。ただ、これには医療機関を受診する前の子も含まれるそうです。代理受診とは親に代わってその児を医療機関に受診させること。
 症状の軽い体調不良児のお預かりはまだ良いのですが、受診前の児の症状が本当に軽いかどうかを誰が判断するのでしょう。まして代理受診なんて誰が言い出したのでしょう。その話を初めて聞いたとき返す言葉がありませんでした。自分で病児保育をやっていますが、僕はそれは必要悪だと思っています。本来ならばない方が良い。どうしても休めないときに最後の砦として子どもをお預かりする。ただし子どもの心に最大の配慮をして。しかし代理受診は少し違います。例えば保育園で子どもが体調を崩したとき、母に代わって医療機関を受診する。それはあまりに就労保障に傾いて子どもの心を蔑ろにしていると思うのです。体調が悪く、保育園に連れて帰れないときはそのまま病児保育室へ連れて行く・・・それはたらい回しというものです。

 そんな理由で僕はマイ保育所の協力医になることはお断りしていました。
安保法案も可決されてしまいました。世の中が危機的状況に陥ったとき、一等最初にしわ寄せが来るのは子どもとお年寄り。子どもを大事にしない国は滅びます。何だか日本の将来が不安でなりません。

かくれんぼの心理

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 先々週の日曜日、慶応で開催されたFOUR WINDSのセミナーに参加してきました。今回は事例検討。岐阜の臨床心理士の先生が報告した事例に小倉先生という著名な児童精神科医がスーパーバイズ(カウンセラーのためのカウンセリング指導)するのですが、事例そのものもさることながら、スーパーバイズの質と内容に圧倒されました。感動すら覚えた2時間半のセミナーでした。
 かくれんぼは発表者の臨床心理士がカウンセリングを進める中で子どもが取った行動です。子どもと心理士が面接の回を重ねるうち、親しくなり、ある回の面接の始まりで、子どもが診察机の下にふざけて隠れるのです。それを小倉先生は「ああ、この子はかくれんぼしたかったんだね。それまでお母さんとかくれんぼ出来なかったんだ」と言われました。会場の皆が大きく頷きました。

 さて、かくれんぼの心理とは。かくれんぼする時、自分を探して見付けてもらえるという安心感がないと隠れられませんよね。ちょっと不安な子はわざと見つかるようにサインを出したりします。つまり親とかくれんぼで遊べるためには、それまでにしっかりと親子の絆ができていることが必要です。安定した愛着が形成され、心の中にお母さんお父さん像が出来てくると子どもはかくれんぼ遊びができ、家の外へも遊びに行けます。直ぐ目の前にお母さんの姿が見えなくても直ぐには不安になりません。では心の中のお母さん像を造るにはどうするか。それには親子の心を響き合わせ、子どもの甘えを受け止め、強い信頼関係を造ることです。そう書くと大げさですが、穏やかな気持ちで、抱っこして、視線を合わせ、お話しする・・・なんだ普通のことでした (^_^; 。でもその普通のことが難しくなっている今の世の中なのかな。

写真は8月の終わり、鯵ヶ沢の海水浴場です。

還暦のお祝い

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 8月28日は僕の誕生日です。今年、僕は還暦になりました。その日、スタッフの皆は写真の様なケーキでお祝いしてくれました。プレゼントは着ている写真のTシャツ。アンパンマンの愛と勇気(背中にそう書いてある (^_^)v )のTシャツです。
還暦とは暦が一巡りし、干支が元に戻ることをいいますが、よく還暦に赤いちゃんちゃんこを着たりします。その理由は60年で生まれた干支に戻り、赤ちゃんに戻るという意味があるそうです。60才となってまた赤ちゃんに戻り人生の再スタート。良いんじゃない?

 還暦を迎え、身体は衰えつつありますが、気持ちは益々若くありたいと思っています。まだまだやりたいことは沢山あるし、まだまだ勉強もしなければなりません。今は秋の学会のことで頭が一杯ですが、来年からは自分のやりたいこと、やりたい診療をしようと考えていました。クリニックも開設し15年が経ちました。来春、少しバージョンアップするつもりです。自分の体力にあった、自分のやりたい診療をしようかと。待ち時間を減らすための工夫や、専門外来の創設等々。どれもちょっと難しい課題ですが、もう残された時間はそんなに長くない。しかし前向きに生きたいものです。

甲子園

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 夏の甲子園が終わりました。今年も数々の熱戦が繰り広げられ、若い高校球児達の活躍が茶の間やマスコミを賑わせたようです。自分はテレビを見る時間も無く、後からニュースで結果を知るだけでしたが、今朝のニュースで生徒の気になるコメントがありました。「自分はこれまで楽しいと思って野球をやったことはありません。勝つために頑張るだけです」と。
きっと彼は本当に必死で頑張ってここまで来たのでしょう。後から振り返って楽しかったと思えるのかもしれませんが、もし本当に楽しくなかったのだとしたら、それはとても残念なことです。

 甲子園の映像をみていつも気になるのはスタンドで応援しているグランドに出られなかった野球部員達です。彼らはどんな気持ちで試合を観ているのだろう。あるいは球場に行くことも出来ず、途中で挫折して辞めてしまった子ども達がきっといるはずです。その子たちはどんな思いでテレビを観るのだろう。外来に体や心が悲鳴を上げて受診するスポーツクラブの子ども達が来ます。未だに練習中に水を飲むなという指導者がいることも信じられませんが、強くなることだけにこだわり、勝つことだけにこだわっていると、心は疲弊します。技量がなかなか上達しなかったり、負けたりした時、むしろそれを糧にし、心が育つような指導者がいると良いのにといつも思うのです。多分、そういうクラブの子ども達は病院には来ないのでしょうね。

 お盆の休みを利用して北海道の子ども達に会うついでに、奥さんと釧路川でカヌーをしてきました。川の水は冷たく透き通り、大自然を堪能してきました。しかしやはり秋の学会のことが頭から離れず、心からリラックスして楽しむことが出来ませんでした。後2ヶ月です。ちょっと焦っている毎日です。

ジオラマ

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 以前もこのブログで書いたことがありますが、僕が医学部を卒業して間もない頃、パキスタン・カラコルム山脈のユクシン・ガルダン・サールという7000m級の山を登ったことがあります。1984年の夏です。日本を出る時は未踏峰でした。残念ながら初登頂は逃しましたが、かなり困難なルートからの初登攀でした。今思うとよく登ったなと感心します。僕の数少ない勲章の一つです。
 先日、僕とザイルを組んで一緒に登頂した広島の精神科医、Aさんが、アルミニウムの塊を持って遊びに来ました(もちろん彼が弘前に来た目的は別ですが)。
ユクシン周囲の精巧な模型でした。
なんでも最近保険に入ったら担当の保険屋が山好きな人で、我々が登った山の模型をNASAの衛生写真から作成し、プレゼントしてくれたのだそうです。アルミと言ってもかなりの重量でよく広島から持ってきてくれたと感心しましたが、秋のFOUR WINDS弘前大会にまた来るからその時まで貸してあげると置いて行きました。飾ってくれと。
 その模型を玄関に飾ってよとスタッフに渡したら、あっという間に写真のようなジオラマを作ってくれました。これにまたびっくり。

 もう僕の人生も終盤で体のあちこちにがたが来て、同じような山登りはできませんが、憧れだけは今も持ち続けています。
学会が終わって少し暇になったら、また山旅をしようと考えていました。

舌下免疫療法

 以前、このブログでも書いたかも知れませんが、舌下免疫療法という新しいアレルギーの治療法があります。これは皮膚から浸入する異物(主としてタンパク質)に対してはアレルギー反応を起こすが、口から入る物に対してはアレルギーを起こさない、耐性を獲得できる(治る)という体内の反応を利用した治療法です。既にスギの花粉症治療で実用化されています。スギの花粉のエキスを口に含むことでスギ花粉に対する耐性が獲得できます。これは抗ヒスタミン剤などの単なる対症療法ではなく、アレルギー体質そのものを治療するわけで画期的と言えます。

 それと同じ方法でダニに対する舌下免疫療法が開発されたことが、今週の「ためしてガッテン」で紹介されていました。子どもに使えるのはまだ先のことになるでしょうが、期待できます。近年、様々なアレルギーに対する考え方、治療法が変わりつつあります。食物アレルギーについても不要な食物制限は反って重症の食物アレルギーを引き起こす可能性があることが分かってきました。食べられる範囲で積極的に食べた方が食物アレルギーは治るのです。我々は常に知識を更新しなければならないし、新しい知見を社会に情報提供して行くことが大切だと考えています。

 スギやダニの舌下免疫療法はスギやダニ単独のアレルギーがある患者では有効ですが、複数のアレルギーがあるとその効果は限定的です。将来、それぞれの人が持っているアレルギーに合わせた、オーダーメイドできる混合タイプの舌下免疫療法が開発されるといいななんて夢見ていました。

誤学習

 子どもの心研修会は日本小児科医会が企画する全国の小児科医を対象とした子どもの心を学ぶ研修会です。毎回、素晴らしい講演が聴けるのでできる限り参加するようにしていました。今日の話題は先週東京で開催されたその研修会から。

 まず、今日のタイトルの誤学習とは。
 例えば子どもがスーパーで玩具を欲しがるとします。最初は「この前、玩具を買ったばかりでしょ」と子どもの要求をつっぱねます。子どもは「買って、買って」としつこく迫る。それでも買ってもらえないと分かると今度は床にひっくり返って「買って〜」と泣き叫ぶ。親は根負けし、「分かったからもう止めなさい。今度だけよ」と買ってあげる。よくありそうな光景ですが、子どもはこの時、床にひっくり返って泣き叫べば自分の要求が通ると学習します。それを誤学習と言います。

 今回の研修である講師が、親の誤学習という話しをしていました。例えば、子どもが言うことを聞かない時、叩いて厳しく叱る。子どもは怖くて言うことを聞く。親は子どもは叩いて叱ればいうことを聞くと学習してしまう。これが親側の誤学習。なるほどと頷きました。確かにそうですよね。誤った方法でたまたま上手くいったとしてもそれは根本的な解決とはならないし、次も上手くいくとは限りません。子どもの心の中で不満は蓄積して行きます。そのうち成長し体が大きくなると、もう叩いていうことを聞かせられなくなる。そして蓄積した不満が爆発し、親はそれをコントロール出来ず、問題行動へと発展するなんてこともあります。体罰は根本的な問題解決にはなりません。叱る時は理由を説明し、行動を叱ることが必要です。本人を否定するようなしかり方は自尊感情を低くするだけです。叱る時はあなたが大切だから叱るのだと伝えましょう。

八甲田レポート:初夏

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 梅雨空の続く南の人には申し訳ないほど、清々しく晴れた日曜日、久し振りで八甲田を登ってきました。今年は学会の準備やら何やらいろいろで、なかなか山へ行けません。前回、登ったのは5月下旬。まだ雪の残る季節でした。2ヶ月近くたって、木々の緑もますます濃く、すっかり山は夏の装いでした。今年もまた毛無岱湿原のお花畑を見逃しました。

 しかしその代わり、毛無岱ではワタスゲのふわふわの毛玉が風に揺れていました。稜線ではヨツバシオガマやミヤマオダマキなどの夏の花が色鮮やかに咲いていました。仙人岱の雪渓が溶けた後にはチングルマやイワカガミが咲き、この季節の八甲田は一年で一番花の種類が多い季節です。

夜景

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 函館へは何度も行っているのですが、その夜景は中学校の修学旅行で見て以来、一度も見る機会はありませんでした。当時、バスで登るに連れて木々の間に見える灯りに息を飲んだのを今も覚えています。
 日曜日、FOUR WINDSの秋の弘前大会の宣伝も兼ねて、函館まで遠征し、ロバートソンフィルムの学習会を開催してきました。前の晩に函館入りし、翌日の学習会に備えました。スタッフと一緒にお寿司屋さんで食事した後、函館の友人が函館山に連れて行ってくれました。しかし生憎の雨模様。夜景の美しさは半減していましたが、それでも傘を差しながら見た夜景は良い思い出として残るでしょう。

 青森県にも夜景の綺麗なスポットが沢山あります。むつの釜臥山からのアゲハチョウは有名ですが、平川の志賀坊高原からの夜景も夕日が岩木山沈んだ後に街の明かりが輝き出すのが美しいです。
 自分としては羽田空港に降りる時に見える川崎の工場の灯りも近未来的で美しいと感じますが、なぜ夜景を美しいと思うのでしょう。暗闇が不安や恐怖の象徴なら、灯火は安堵、安心、進むべき方向を示す目印でしょうか。
丘から見下ろす夜景は美しいと感じますが、写真で見る宇宙からの地球の夜景は電気の無駄遣いのようで醜悪に感じてしまいます。身勝手ですね。

 さて、学習会の方は好評でした。ロバートソンフィルムの威力でしょう。このフィルムは2歳前後の子ども達が親と引き離された時、どのような表情、どう変化するかを克明に記録したイギリスの古いフィルムです。子どもと関わる職種、全ての方にとって必見です。しかし先日、若い小児科医にフィルム学習会の話しをしましたが、あまり興味を示してくれなかったなあ〜 (T_T)

今週は残念な写真になってしまいましたが、気持ちだけ (^^ゞ

子どもが子どもを生きること

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 「まず腕白小僧を育てないと、良い人間を育てることは出来ない」
ジャンジャック・ルソーの言葉です。土曜日に開催されたFOUR WINDS青森の特別講演会で渡辺久子先生が引用されていました。腕白小僧を育てるにはAKUが必要。AKUとはA(あぶない)、K(きたない)、U(うるさい)。AKU(悪)を制御できると大人になる・・・。
 講演会は100名以上の参加者があり、希望者を途中から断らざるを得ませんでした。もっと大きい会場を用意すれば良かったとちょっと後悔。
しかしそれほど広くない会場のお陰か先生も聴衆の顔がよく見えたそうで、食い入るように聴いてくれている参加者に先生の話しも熱を帯び、予定時間を遙かにオーバーして2時間半もの長い講演会となりました。しかしアンケートにはほとんどの方が長く感じなかったと書いてくれました。

僕のノートには他にも沢山のフレーズがメモしてあります。
こころ、脳は関係・環境・体験で作られる。
欧米は母親の子宮のような社会を作っている。
人は間主観性という言語的コミュニケーションにより、響き合いながら生きるもの。
赤ちゃんは相手の意図と雰囲気を見抜く。赤ちゃんを尊重しよう。赤ちゃんは既に7ヶ月でプライドを持つ。
父性は家庭に必要。父親の育児参加で子どもが二十歳になった時、遙かに自己肯定感、社交性が高くなる。
まだまだありますが、この辺で。

 久子先生には秋のFOUR WINDS全国学術集会でも基調講演をお願いしました。弘前大会には他にも著名な何人かの先生をお呼びし、心の「響き合い」というテーマの下、よくこれだけのプルグラムを作れたものだと自画自賛しています。
是非、沢山の方々が参加してくれることを願っています。
大会HPは次の通りです。
http://www.j-kodomo.com/FOURWINDS_Hirosaki/