問題行動の裏に潜むもの

院長のつれづれ

 最近、学校が大変なことになっているような気がします。当院だけなのかも知れませんが、離席や罵声、クラスメイトとの喧嘩や癇癪など様々なトラブルで受診を勧められるケースが昨年より遥かに多いのです。家庭ではお利口さん、しかし学校で爆発したり、あるいは逆に先生にベタベタ甘えたり。発達障害を疑われての受診ですが、そうではない関係性障害が原因となっている場合が少なくありません
 関係性障害とは親子関係がうまく行かないことが原因となって、様々な症状が現れたものを言いますが、自分が教えを請うている渡辺久子先生は関係性障害を「親と子とのボタンの掛け違い」と説明しています。親子に限らず、他の親しい人との間でも、その関係がギクシャクすると、心の傷が身体症状となって現れてきます。
 親に力で押さえつけられたり、あるいは親が困難な状況にあり家庭で子どもが親を気遣っていたりすると子どもはそのストレスを学校で発散することがあるのです。

 関係性障害とは言えませんが、長い休校の間、ゲームに没頭し、その影響で衝動的になったと思われる子もいます。ゲームが原因で親子のバトルが始まったりしているかも知れません。

 今、我々は非常に困難な状況にあります。青森県のCOVID-19の患者数は多くはありませんが、それでも世の中全体の余裕がなくなり、それが子どもの育ちに影響しているのではないでしょうか。景気が低迷し、親の就労が不安定となり、家庭にゆとりがなくなると子どもをのびのびと育てることが出来なくなってしまいます。
 
 子どもだって様々なストレスに曝されています。何のストレスもなく大きくなることはありません。様々の嫌なこと、辛いことを経験し心に傷を受けますが、母親にholdingされ、甘え、ありのままの自分を出すことで、ストレスは解消され、母親への信頼関係は強くなり、心の安全基地が強化されます。
 しかし母親が子どもをうるさく感じ、子どもを充分にholdingしてあげられない時、子どもは母親に気を使い、充分に甘えられず、我慢し続け、ストレスは解消されず様々な身体症状となって現れるのです。
 ただそれは、子どもをholding出来ない母親に問題があるのではありません。母親が子どもをゆとりを持ってholding出来ないように追い込まれているのです。(澤田敬先生の論文からの引用)

 僕の心配が正しいとしたら、その解決は簡単ではありません。子どもの問題行動を子どもだけの問題、親子だけの問題と捉えては解決しません。地域社会全体で親子をholdingする必要があるのではないでしょうか。

天候や自分の体調でしばらく山へ行けていません。紅葉の八甲田は来年までお預けです。

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