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抗生剤の使い方

講演・学会・検診

今年最後の話題は抗生剤の使い方についてです。
今週も長くてごめんなさい m(_ _)m。

 当院だけでなく、最近は抗生剤の適正使用を考えておられる先生方が増え、細菌検査をしても耐性菌が減ってきたように感じます。先日クリニックに届けられる商業雑誌に「間違いだらけの抗生剤使用」という特集が載っていました。その雑誌は無料で配られるもので、おそらく広告費で成り立っていると思われます。従ってこの手の雑誌の特集は如何に薬を使うかと言うことに主眼が置かれることが多いのです。しかし今回の特集は違いました。特に神戸大学感染症内科I教授が書かれた「セファロスポリンの使い方」は面白かったです。抗生剤にも色々な系統があるのですが、セファロスポリンもその一つ。フロモックス、セフゾン、メイアクトなど現在非常に多く使われている抗生剤がこのセファロスポリン系です。しかしI先生は「その大多数は誤用である」「風邪に抗生剤を用いることは正当化できない。急性気管支炎も同様」「成人でも小児でも風邪に抗生剤を出した群と出さない群で症状の改善に差がない。むしろ副作用の出る確率が倍以上高い」「急性中耳炎についても多くは抗菌薬無し、対症療法で治療できる。もし使うとしてもペニシリン系」そもそも「薬理学的にも消化管からの吸収が非常に悪く効かない」「副作用もある。低カルニチン血症による低血糖の事例が報告されている」などなど痛快な解説をしていました。小児科だけでなく、内科、耳鼻科の先生もこれを読んで欲しいなと思いました。

 随分前ですが、このブログで抗生剤の適正使用を心掛けることでむしろ気持ちが楽になったと書いたことがあります。抗生剤は細菌に対して有効な薬剤です。ウイルスには効きません。それを分かっているのに細菌感染の可能性が否定できないとういうだけで処方するのはおかしくないか? 診察だけで診断が付かないなら検査して診断をはっきりさせればいい、そうと決めてから自分のモヤモヤ感が無くなりました。
 抗生剤だけではありません。咳止めや鼻水の薬もそうです。咳や鼻水にしても意味があります。その意味を理解して治療する必要があるのです。鼻水を止めるのが良いのか。本当に咳を止める必要があるのか。それを考えながら治療するべきだと思っています。

今週の写真は早春のブナ林。今年の春、岩木山の赤倉で撮ったものです。

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