誤診

講演・学会・検診

 昔、東大のある教授が自分の誤診率を十数%だと言ったという話しがありました。それを聞いた一般の人がそんなに高いのかと驚いたそうですが、医者はそれを聞いて、そんなに少ないの?と驚いたとか。自分もおそらく沢山の誤診をしているはずです。先月、参加した日本小児科学会で「診断エラーと向き合う」というタイトルのシンポジウムがあり、多くの参加者を集めていました。どの医者も診断エラーを経験し、誤診を減らしたいと思っています。

誤診に至るには色々な因子があります。

一つには自分の知識・技術の不足でしょう。しかし十分な知識と経験を持っていても誤診はあります。それは認知が自分の都合の良い解釈に引っ張られることがあると言うことです。簡単に言えば思い込み。

例えば

  自分が楽に処理できるような診断仮説のみを考える

  最近遭遇した類似症例と同じ疾患を考える

  自分の仮説に不都合なデータを無視する

          (シンポジウムの発表から)

疲れや睡眠不足、患者数が自分のキャパを超えているなどで診断能力は鈍ります。また、患者に対する陰性感情が生じている時も診断ミスは起こりやすいものです。

では診断ミスを防ぐにはどうすべきなのかというと、

それには先ず自分の限界を知ること

自分の感情を認識すること

メタ認知と呼ばれます。

常に新しい情報を取り入れることは大切です。

他にも他者の視点、例えばスタッフと患者の情報を共有することも大切です。

そして患者、小児科では親御さんの気付きを過小評価しないこと。思い込みが強いとき、その訴えを否定しがちです。

診断ミスをなくすことは大切ですが、それよりもっと大切なことは、患者の不安に寄り添う気持ちを忘れてはならないことだと思うのです。

それが出来ているか否か、あるいは何故それが出来ていないのか自分自身を俯瞰することが大切なのでしょう。

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