価値観の押し売り

講演・学会・検診

 土曜日、診療を早くに切り上げて向かったのはあおもり母乳の会の講演会でした。あおもり母乳の会は母乳育児の普及と支援を目的として発足された会です。毎年、学習会・講演会が開催されていますが、今年の講演会の講師は聖マリアンナ医科大学小児科の名誉教授、堀内勁先生でした。堀内先生は日本で初めて未熟児医療にカンガルーケアを取り入れた先生です。カンガルーケアとは生まれて直ぐの赤ちゃんを裸で母親のおっぱいを吸わせるケアです。タイトルは「早期の母子コミュニケーション ?心育ちと母親になること?」。様々な動画を引用し、赤ちゃんとお母さんの結びつきを分かり易く講演していただきました。1000gに満たない未熟児が生まれて直ぐに母親の乳首を吸う姿は感動的ですらありました。我々男性には決して体験できない母子の世界を垣間見たように思いました。

 今週のタイトルの「価値観の押し売り」はその講演の中の言葉です。「母子間のコミュニケーションと発達は自己調整と相互交流調整が柔軟に行き来することでもたらされる。丁度良い注目、情動、飽きない、過度に興奮し過ぎないことが大切。」マーラーのいうgood enough motherということでしょう。best motherでなくて良いのです。しかし「母子分離、マニュアル的育児、孤立・密室保育、それに加え母子保健関係者の価値観の過度の押し売りは母子間の相互交流調整の障害の一つとなり得る」と教えていただきました。自分が母乳育児を勉強し始めたとき、それを過度に押し付けていたのではないかと反省します。あるいは日頃の診療で知らず知らず価値観の過度の押し売り、押し付けをやってるのではないかと訝しく思います。価値観の押し売りは、本人は良かれと思ってやっているのですから、自分ではなかなか気が付きません。やはり何事に於いても内省すると言うことが大切なのでしょう。

 さて、今週の写真は弘前公園の桜です。去年と違って「もこもこ」の桜でした。公園を管理する人達の努力は並大抵なものではないのでしょうね。でもきっと報われて良かったと思っているじゃないかな。弘前の桜は日本一と誇らしく思えますよね。

filed under: