0歳児保育を非難する先生がいます。自分もそれに賛同するところはあります。可能であれば1歳になるまでは誰でも育児休暇を取れる世の中であって欲しいと考えます。
それはさておき、今の日本社会で保育園は欠かせない存在となっています。ただ子どもが保育園で過ごす時間が長いということは、必然的に保育園は子どもの育ちの多くを担わなければならないと言えます。当然、保育の質が求められます。そう考え、また自分の所属する学会(日本乳幼児精神保健学会)の他の先生にも触発されて、昨年春に件名の研究会を立ち上げました。2ヶ月毎に保育園の先生方と一緒に勉強会を開催しています。勉強会には毎回、市内の各保育園から30名を越える参加者があります。
先日、その勉強会で高知市の澤田敬先生をお招きし、講演会を開催しました。澤田敬先生は自分が子どもの心の診療を始めたときに、その見方や考え方を指導して貰った先生です。子どもにとって甘えることはとても大切で、「あまえ子育て」を提唱されています。もう80歳を越えるご高齢にも拘わらず、「あまえ子育て」を広めたいと、呼ばれれば全国何処へでも出掛けて講演活動をされています。その口調は朴訥ですが、心に響くものがあり、今回の講演会でもハンカチで目を押さえながら聞き入っている保育士さんが沢山いました。
弘前では大学主導で5歳児健診が始まり、発達障害は早期診断すべきという考えが定着してきました。その結果、この地域社会全体が、子どもの問題行動を発達障害と直ぐに結びつけてしまう傾向があるようです。確かに早期診断で救われる子も確かにいます。しかしどの子もそうとは言えません。子どもの問題行動は大人にとっての問題行動であって、単に発達障害だけではなく、子どもの心が混乱した子ども自身が困っている行動と言えます。つまり生まれつきの障害ではなく、子どもを取り巻く環境から混乱し、大人にとっての問題行動を呈しているということが少なくないのです。そんな時、保育園の役割は重要です。子育てに悩む母親に寄り添い、母を支えることで、母親の心が癒え、子どもも健やかに育っていきます。
当院の「子どもの心相談室」でも子どもの心が健やかに育つためには今何が必要か、いつもそれを考えながら診療しています。