以前、同じタイトルで長崎大学森内先生の講演の内容を紹介しました。今日はナショナル・グラフィックの記事を紹介します。「子どもがコロナに感染する・させる割合は大人の半分ほど」とありました。その内容はアイスランドでの最新研究で子どもが新型コロナウイルス感染拡大にどの程度影響しているか明らかにされていました。およそ4万人を対象にした調査の結果、15歳未満の子どもが新型コロナに感染する割合、および他人に感染させる割合はいずれも大人の半分程度だそうです。また、子どもの感染例はほぼ全てが大人から移されたケースだったそうです。おそらく日本でもそうでしょう。
と言うことは感染拡大を防止するのに休校措置は役立たないということです。休校は子どもや地域社会への影響が大きく、米疾病対策センター(CDC)も休校をなるべく避けるように推奨しています。
ただ、思春期以降に感染リスクは一気に上昇するようです。米国での調査では高校での感染割合は小学校の3倍近くに上るとありました。
ではなぜ子どもは罹りにくいのか。
以前から新型コロナウイルスが結合する「ACE2受容体」が子どもは上気道に少ないからだという説があります。また小さな子どもはウイルスにさらされる機会が多いために、新型コロナウイルスに近いコロナウイルスに対する免疫があり、それが新型コロナウイルスにも有効に働いている(交差免疫)のではないかと言う説もあります。
別の論文ですが興味深い報告がありました。新型コロナに感染した患者の年齢が若いほどインターロイキン17A(IL-17A)とインターフェロン-γ(INF-γ)の値が高いことが明らかになったそうです。IFN-γにはウイルスの複製を抑える作用があります。全ての人に備わっている自然免疫系の一部であり、感染後の早い段階で活性化されます。一方、成人患者では小児に比べ、新型コロナウイルスのスパイク蛋白に対する強い免疫反応が認められたそうです。そして中和抗体が作られ、ウイルスを排除する。
言い換えると、小児では感染して直ぐに自然免疫が働き発症を抑えるが、成人では感染してから免疫ができ、それからウイルスを排除する(獲得免疫)ために時間が掛かると言うことです。そして様々な炎症反応が連鎖し、重症化するのでしょう。
地域別の新型コロナウイルスの感染者数をみると、大阪や北海道は減少傾向にありますが、東京は微増、その周辺や地方の中核都市では増加、全体として微増傾向にあります。GoToが原因かどうかは分かりませんが、明らかに首都圏のコロナが地方に拡散したように見えます。経済と感染防止の両立は困難ですが、感染の危険性の高い場面・場所とそうでない場所とのメリハリの利いた対策が必要と考えます。