日曜日、カナダのトロント大学精神科准教授、キャスパー・チューター先生の講演会に参加してきました。テーマは“子ども時代のdisplacement、及びそのパーソナリティ形成に及ぼす影響”
displacementとは強制的に移住されること。戦争や災害で故郷を追われ、無理矢理、別の土地に移住させられた家族の中の子ども達の心理発達がテーマでした。今の日本でも5年前の震災で故郷を離れざるを得なかった人、福島のように帰りたくても帰れない家族が沢山います。今回の講演はそれを踏まえての講演依頼だったと理解しました。
講演の中でチューター先生は子に掛かるトラウマ状況の影響はそれに対処する両親のキャパシティに左右されると述べていました。家族にストレスに対処する力があれば乗り越えられるということでしょう。戦争や災害からくる大きなトラウマもありますが、引っ越しなどのdisplacementも低レベルのトラウマになりえます。
両親が十分な情緒的包容力を持たない場合、それらのトラウマが子どもの人格に大きな影響を与える可能性があります。そうすると良いか悪いかのどちらかだけに分裂し、白か黒しか認めない窮屈な人格が出来てしまいます。健全な人格の発達には*乳児にとって安全で穏やかな首尾一貫した環境があること、*食事、暖かさ、快適さ、静けさといった身体的現実的な面と同時に、母/両親と乳児との優しい体の触れ合いを通して感情的な側面が育まれることが必要です。安全基地を与えることが出来なくてはならないのです。
さて、振り返って僕は小さい頃から引っ越しと転校を繰り返してきました。おそらく僕の両親はそれに対応するキャパシティを持っていたのだと思いますが、その体験は自分の性格に多少なりとも影響を与えているのではないかと思うのです。
春、転勤で弘前から離れる人、新しく来る人が多いこの時期、それが子どもに重大な影響を与えることのないよう、我々は上手に支える必要があるのではないかと思いました。
写真は講演会が始まるまでの空いた時間でスタッフと行った世田谷の豪徳寺の観音様です。このお寺は招き猫のお寺として知られ、観音様の周りには願いを叶えた沢山の招き猫が奉納されていました。
招き猫に囲まれ、観音様はにっこり笑っていました。