11月の初め、今年の日本乳幼児精神保健学会が大阪の千里で開催されました。
テーマは「妊娠・出産からの親子へのよりそい 〜親子の出会いから始まる甘えに満ちた子育てをめざして〜」
大会長の北島先生は未熟児新生児医療ではとても著名な先生で、元は関西の大学の教授でした。以前、未熟児室から巣立った子ども達に被虐待のケースが多いことが問題になっていました。それをカンガルーケア、すなわち生まれて間もない赤ちゃんをママの胸にカンガルーのように肌と肌とを触れ合わせ抱っこすることで、母子共に幸せを感じ、虐待が減ったのです。北島先生は新生児医療に乳幼児精神保健の視点が必要であると痛感し、我々の学会に加わってくれました。
先生は良好な母子関係を構築するためには幸せなお産が大切と主張しています。では幸せなお産とはどんなお産なのでしょう。
現代の日本のお産はほとんどが、分娩台の上でのお産です。実はこの分娩台で仰向けのお産の歴史は古くはありません。戦後になって急速に広まったようです。それまでは座位でのお産が多かったようです。分娩台でのお産はもしトラブルがあった場合、直ぐに手術に切り換えられるとの事で、安全が優先され、広まりました。しかし仰向け寝のお産は、それ自体にリスクがあるそうです。今回、それを初めて知りました。仰向け寝をすることで、母胎の血管を子宮が圧迫し、臍帯の血流も減少し、産まれてくる赤ちゃんも苦しくなることがあるのではないかという意見があるそうです。
お産には分娩台以外にも座位や側臥位、水中分娩などさまざなま分娩があります。それらをフリースタイルのお産と称して、取り入れている施設もあります。
さて、お産に大切なことはそのスタイルのみならず、そのお産に寄り添う助産師の存在です。助産師が出産前から母親に寄り添い、生活指導から、育児相談まで相談に乗ってあげる、そんな頼ることの出来る存在が必要なのです。そして幸せなお産が、その後の良好な親子関係の基礎となると北島先生は主張しています。そして病院ではなく、助産所がそのようなお産を実践している。助産所での自然分娩だと、お産の痛みも強くはなく、会陰を切開することもない、赤ちゃんも泣くことなく生まれることさえあると言います。赤ちゃんも苦しくないのだと・・・。まあそこまでは自分には分かりませんが、出産を控えた母親の不安に寄り添う助産師の存在は大きいことはよく分かります。
北島先生の主張に多少の窮屈さはありますが、助産師の存在が大きいこと、たとえ助産師でなくとも、母親に寄り添う存在の必要なことはよく分かりました。
ところで無痛分娩や帝王切開は自然分娩の対極です。中国や韓国では自然分娩は半分以下だそうです。日本でも首都圏を中心に無痛分娩が広まってきています。その無痛分娩の是非も深く考える必要があるのでしょう。それが望ましいケースもあるでしょうし、その逆もあるでしょう。
皆さんも自分にとってどんなお産を望ましいのかよく考えて、出産の場所を選ぶと良いでしょう。
写真は学会場近くの万博記念講演の太陽の塔です。一緒に参加したスタッフが朝の散歩で行ってきたそうです。僕も行ってみたかった (^^;)
