所謂、清潔不潔の意味と我々医療関係者のいう清潔不潔の意味とは少し違います。学生時代、あるいは医者になって間もない頃、この清潔不潔の概念を厳しく教え込まれました。ここがしっかりしていないと手術や様々な処置をした際、感染を起こし、医療事故の元になります。我々のいう清潔とは滅菌処置をしたものだけが清潔でそれ以外のものは全て不潔と考えるのです。台所で綺麗に洗ったお皿でもそれは不潔です。そして清潔な物でも少しでもそれ以外の物、つまり不潔な物と接触しただけで、それは不潔と見なします。滅菌した医療器具を不潔な手(一見清潔でも)で触ると、それは全て不潔なのです。手術の前のようにしっかりと時間を掛けて手洗いし、滅菌した手袋で触るのでない限り。それは日常生活には無用の概念、むしろ迷惑なものかも知れませんが、本気で感染予防が必要なとき、その感覚は極めて有用です。
今週、ノロウイルス胃腸炎の話題が世間を騒がせました。ノロウイルスは感染力が極めて強く、それを予防するのは困難です。しかし感染経路は接触感染なので先の清潔不潔の概念に基づき、完璧な予防対策を取れば感染をコントロールすることは可能です。『ことりの森』ではノロウイルスの他の子への施設内感染はありません。ノロやロタと分かっていればドアノブもハイターで消毒します。子どもを看る保育士は担当制にして他の子には触りません。
浜松のパン工場でも当然、衛生管理は行われていたのでしょうが、保菌者は下痢をしていなかったそうです。むしろそこが落とし穴だったのかな。感染しても症状の無いことは少なくないし、胃腸炎が治ってもしばらく便にウイルスが出てくるのです。従って、下痢をしていようがいまいが、普段からしっかりと衛生管理をするべきなのです。
ただ、家庭でこれをやっていては疲れるばかりでしょう。手袋をして食事の用意をするお母さんはいないんじゃないかな。普段から感染しても負けない体を作り、発症しても適切に対応できるホームケアのスキルを身に付けることが大切と思っています。