5歳児発達健診

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 1月の広報弘前に出たそうですが、弘前市は今年から5歳児発達健診をスタートさせます。その説明会が先週の木曜日にありました。3歳児健診でも自閉症などの発達障害の発見に力が注がれますが、所謂軽度発達障害など言葉の発達の遅れのない子ども達は見逃されることも少なくありません。そして学校に入ってから、様々な苦労を抱えてしまうことがあります。5歳児発達健診はそれを補う目的で始まった健診で、県内ではつがる市と八戸市で既に行われており、全国でも少しずつ広まってきています。
 詳しい健診の実施要綱はここでは避けますが、僕も以前5歳児健診を提案したこともありました。しかし他の先生から発達障害を診断した後の受け皿が整わない現段階では5歳児健診を行うのは時期尚早との意見があり、誰も現実的なものとして考えていませんでした。それが今回、一気にことが進んだのはおそらく市長の強い意志と、大学精神科の意図とが合致したからでしょう。実は昨年、弘前大学では全国の大学精神科の中で始めて児童精神科医が教授になったのです。いずれにせよこのように新しい物事を始めるにはトップダウンでないと実現に時間が掛かるのかも知れません。
 大学精神科の教授は将来1歳半、3歳児健診で早期発見できるシステムを作り、早期療育に繋げたいと仰っていました。早期診断と早期療育。それが可能ならそれは確かに素晴らしいことかも知れません。しかしそこは慎重に行かないと落とし穴があるような気がしてなりません。発達障害と診断してしまうことでその子の全ての行動をそれと結びつけ、その子の本当の心を見逃すことになりはしないか。市はカウンセリングを行う臨床心理士の増員を考えていると話していましたが、発達障害の子ども達への対応は難しいです。安易な増員はうわべだけの対応に終わってしまう危険性があります。
 発達障害と診断、あるいはそれと疑われただけでご家族は大きな不安を抱えるでしょう。くれぐれも泥縄にならないようにと市にお願いしました。

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