トラウマとレジリエンス(自然治癒力)

講演・学会・検診

 先週はまだブログを更新する気になれず、1週空いてしまいましたが、やはり大切なことは伝えていかなければならないだろうと、また何とか書いて行きたいと思っています。

 さて、先々週になりますが、広島で開催されたFOUR WINDS乳幼児精神保健学会に参加してきました。今年の来賓講演のテーマは「トラウマの連続性にどう対応するか。」講師はカナダの著明な精神科医。トラウマは100年来の精神保健のテーマだそうですが、講演ではトラウマのタイプ、その影響の世代間伝達、レジリエンスなどについて、ご自身の体験も交え、解説していただきました。

ちょっと難しい話しになります。長くてごめんなさい。

 乳幼児への心理的身体的ネグレクトや虐待は低レベルの継続し続けるトラウマであり、一見深刻さははっきりしないが、犠牲者に有害な長期にわたる影響を及ぼす。これを「累積トラウマ」と呼ぶ。第2次世界大戦は大量のトラウマを大規模に引き起こした。世代間伝達され今も若い世代にその影響が見られる。ホロコーストとはナチスのユダヤ人に対する虐殺で知られるが、ギリシャ語の本来の意味はホロ=全て、コースト=焼き尽くすであり、それからすると広島の原爆こそまさにホロコーストであった。
 個々におけるレジリエンス(自然治癒力)のレベルは、その人の早期乳幼児期における赤ちゃんと母親と家族の関係性に結びつく、基本的なパーソナリティ構造によって決定される。第2次世界大戦で敗戦国となった日本とドイツが戦後目覚ましい発展をとげたのは注目に値する。

 明治初期、日本を訪れた外国人は、日本は世界で一番子どもに優しい国だと驚いたそうです。広島にしろ、神戸にしろ、原爆や震災から、かくも驚異的な速度で復興を成し遂げたのは、かつて日本社会が子どもを大切にしていた社会であり、レジリエンスの力が高かったのではないからでしょうか。今の日本は子どもに優しい国とはとても言えません。先の未曾有の大震災から復興できる力が、今の日本に残っていることを願っています。

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