検査ありきの医療に思うこと

クリニックエピソード

 弘前市は爆発的な新型コロナの流行に曝されています。さながらインフルエンザの流行の初期の様な状況です。当院でも連日2、3名の陽性者を確認していました。しかし今のところ、当院で陽性になった子ども達は全て軽症で、ほとんど普通の風邪と変わりありません。中にはぐったりと元気のない子もいましたが、翌日には解熱し元気になっていました。

 現在、新型コロナの患者(COVID-19)は全て登録することが義務づけられています。患者の情報を入力するのですが、疑問に思ったのは青森県ではPCRが陽性に出ないと、確定診断として認められなかったことです。身近に明らかな感染源があり、抗原検査で陽性に出てもそれだけでは確定診断とは認められず、保健所は動かないということを後から知りました。それは違うのではないと憤慨し、クレームを付け、弘前保健所管内だけの特例という形で抗原検査の陽性をもって確定診断とすることを認めてもらいました。しかしまだ検査無しでは認めてくれません。家族に感染者がいて、COVID-19の症状が出れば検査なしでも臨床的には診断可能です。何が何でも検査で陽性が出なければ認めないというのは医学的には可笑しな話しです。診断基準を行政が決めることに違和感を感じます

 社会全体の対応が必要な感染防止対策は行政主導で行うことが望ましいと考えますが、実際の患者診療において、行政は医療をサポートすることがその役割と考えています。しかし最近、逆に足を引っ張られていると感じることもしばしばです。

 医療現場でも往々にして検査結果の方が重視されることが少なくありません。もちろん検査は重要ですし、参考にはしますが、検査と臨床と一致しないことは時々あります。もちろん検査から診療を見直すことも良くありますが、検査に縛られるのは良くないと考えています。そういう日頃からの思いが今回の自分の憤りの引き金に成ったのだろうと内省していました。

 コロナウイルスは刻々と変化するウイルスのようです。オミクロン株に対して今の国の対策は過剰に思えますが、WHOでも言っているように、再び重症化しやすいウイルスへと変異する可能性はあります。それならそれで臨機応変に対応すれば良いのです。もちろんその時のために備えをしておく必要があります。舵取りが難しいのはよく分かりますが、柔軟な対応を切に願っています。

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