行き違い

講演・学会・検診

 5年前、僕の呼びかけで結成されたつがる小児科医の会、年に3,4回の学術講演会を開催してきました。先週土曜日はその第16回目の学術集会でした。発達障害で著名な平岩幹男先生をお招きしての講演会でした。今回は弘前自閉症スペクトラム支援ネットとの共同開催ということで、小児科関係者だけでなく療育関係者も参加し60名以上の大きな会となりました。その平岩先生のお話から。

行き違い
 平岩先生は患者や家族の思いと医療機関の考えとの間には行き違いがあるとお話しされました。自閉症の子を持つ家族はその治療と将来の展望を期待して医療機関を受診されます。しかし自閉症に根本的な治療があるわけではなく、医療機関はただ検査と診断をして「様子を見ましょう。長い目で見守りましょう。温かく見守りましょう」と話して帰すだけ。そこには大きな行き違いがある。
それは医療機関が子どもと家族の困りごとに対して何も具体的な対応の指示が出来ないからではないのか。自閉症の診断より困りごとのへの対応が必要。それが改善するのなら診断はなくても構わない!!

 正に日頃、僕が考えていることそのものでした。先生は療育機関を紹介することなく、ご自分のクリニックで、一人で子ども達とその家族に向き合い、オーダーメイドで対応を考えて指導(練習してもらう!)しているのだそうです。治療薬を使うことも少ないと。そして子ども達のself-esteem(自尊感情)を傷つけない、高めることが一番大切と。
 何より感心したのは平岩先生が子どもの観察に掛ける時間の長さでした。じっくりと観察し、その子がどこに困りごとを感じているかを探り、そしてその子にあった方法を考え、それをお母さんにも練習して貰うのだそうです。

 講演はその具体的なアドバイスが満載でした。それは何も自閉症の子ども達だけに使えるものではありません。どの子に対しても役に立つもので、早速外来で色々と試していました。
「注射、頑張れる人は手を上げて」「はーい」なんてね (^_-)-☆

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